鵜(ウ)と魚の泳ぐスピード比較
まずは、鵜と魚の実際の泳ぐ数値を比較してみましょう。
鵜(カワウやウミウ)の潜水スピードは、小型記録計を用いた研究により、**平均して秒速1.6メートル(時速約5.8キロ)**だと判明しています。
さらに、獲物の魚を追う瞬間の**最高速度は秒速4.7メートル(時速約16.9キロ)**にも達するのです。
一方、鵜の主なターゲットとなる小魚などの遊泳速度は、平均して時速2〜8キロ程度にとどまります。
つまり、巡航速度の時点ですでに魚と互角かそれ以上であり、本気を出した鵜から逃げ切るのは至難の業だと言えます。
マグロやカツオのような外洋の回遊魚であれば時速80キロ以上で泳ぎますが、沿岸部や河川にいる一般的な魚たちにとって、鵜はまさに圧倒的なスピードを誇る存在なのです。
なぜ鵜は水中をそんなに速く泳げるのか?
空を飛ぶ鳥は、体を軽くするために骨をスカスカにし、羽毛に空気を溜め込んで浮力を得るのが普通です。
しかし、この構造では水に浮いてしまい、深く潜ったり速く泳いだりすることができません。
鵜はこのジレンマを、実にユニークな進化で乗り越えました。
最大の秘密は、あえて**「水を弾かない羽毛」**を持っていることにあります。
カモなどの水鳥は油を分泌して羽の撥水性を保ちますが、鵜の羽毛は水が染み込むようになっているのです。
羽毛に水が染み込むことで体内の空気が抜け、浮力が一気に減少します。
これによって水中での抵抗が極限まで減り、強靭な水かきを持つ足の推進力を100パーセント活かすことができるわけです。
空を飛ぶ能力とのトレードオフ
潜水に特化するなら、ペンギンのようになぜ空を飛ぶのをやめなかったのかと思うかもしれません。
実は、鵜は空を飛ぶ能力を残したことで、広範囲の豊かな場所を素早く移動できるという最大のメリットを手に入れました。
鵜の飛翔速度は時速50〜60キロにも達し、数十キロ離れた場所にも平気で移動します。
しかし、その代償もしっかりと払っています。
水を弾かない羽毛で潜水した後は、体が濡れて重くなり、体温も急激に奪われてしまうのです。
だからこそ、鵜は水辺の岩や杭の上で、よく羽を広げて日光浴をしています。
あれは単に休んでいるのではなく、濡れた羽を乾かして再び飛べるようにするための、生きていく上で欠かせない儀式なのです。
まとめ
自然界の進化には、常に驚かされます。
空を飛ぶ機動力を維持したまま、羽毛の撥水性を捨てるという逆転の発想で、水中でも魚を凌駕するスピードを手に入れた鵜。
釣り人を悩ませる強敵ではありますが、その洗練されたハンターとしての能力には敬意すら覚えてしまいます。

