海藻類の影響は?
黒潮が接岸すると、磯場に生える海藻類(アラメ・カジメ・ホンダワラ・ワカメなど)にも大きな影響が現れます。
以下に、磯の海藻類に対する主な変化をメリット・デメリット両面から詳しくまとめます。
メリット
・栄養塩の供給で一時的な成長促進
黒潮は本来、外洋性の暖流で栄養塩は少なめですが、沿岸で親潮系や沿岸水とぶつかると湧昇流(アップウェリング)が発生します。
この混合により窒素やリンなどの栄養塩が一時的に増え、海藻類の光合成が活発になることがあります。
特に春先にはワカメやホンダワラ類の新芽が伸びやすく、藻場の一部が活性化するケースもあります。
・南方系海藻の分布拡大
黒潮が接岸することで水温が高く安定するため、
・ヒロハモク
・ツルモ
・オキナワモズク
など亜熱帯系の海藻が北上し、和歌山〜紀伊半島沿岸で確認される例が増えています。
生物多様性が一時的に広がる点ではポジティブです。
デメリット
・高水温による褐藻の衰退
アラメ・カジメ・ホンダワラなど温帯性の大型褐藻は、20〜23℃以上が長期間続くと生育が弱まります。
黒潮接岸により水温が25℃近くまで上がると、葉が溶けたり繁殖が失敗したりして**藻場が縮小(磯焼け)**するリスクが高まります。
磯焼けはアワビ・サザエ・ウニなどの餌環境を奪い、沿岸生態系全体に影響します。
・季節サイクルの乱れ
黒潮が接岸と離岸を繰り返すと、海藻の発芽・成熟時期がずれます。
本来、秋に発芽して春に成熟するワカメやカジメが、暖かい冬で芽出しが遅れるなど、漁業利用(ワカメ養殖)にも悪影響を与えることがあります。
・台風・強潮流による物理的被害
黒潮接岸時は潮流が速く、また台風の進路も黒潮沿いになりやすいため、強い波浪や流れによる藻体の破断が起きやすくなります。
大型褐藻の森が根こそぎ剥がれると、回復に数年以上かかるケースもあります。
まとめ
黒潮接岸は
・一時的な栄養塩供給による成長促進
・南方系海藻の北上
といったプラス面がある一方、
**「高水温による磯焼け」**という深刻なリスクを伴います。
和歌山沿岸でも近年、黒潮大蛇行が弱まり接岸傾向が続く年には、
・アラメやカジメの藻場縮小
・アワビ資源の減少
が報告されています。
今後は黒潮接岸情報を漁海況図で確認し、
・温帯性海藻の保全(人工藻場設置や種苗移植)
・南方系海藻との共存利用
など地域ごとの管理が一層重要になるでしょう。


