釣り業界に忍び寄る影? データで見る市場縮小の現状と未来

近年、趣味としての釣りの人気は相変わらず高いように見えますが、実は日本の釣業界は静かに、しかし確実に市場縮小の波にさらされています。

釣り人の減少、コロナ禍の「バブル」とその反動、そして外部環境の変化…さまざまな要因が絡み合い、かつての勢いを失いつつあるのが現状です。

今回は、具体的なデータとともに、日本の釣業界が直面している課題と、その背景にある要因を深掘りしていきましょう。

釣り人口の減少が止まらない!

日本の釣り人口は、1998年の約2,020万人をピークに、残念ながら減少の一途をたどっています。

直近のデータを見てみましょう。

  • 2017年: 640万人
  • 2020年(コロナ禍初期): 550万人(前年比17.9%減と大幅な落ち込み)
  • 2022年: 520万人(過去最低!)

「コロナ禍でアウトドアレジャーが見直されたから釣り人も増えたのでは?」と思われる方もいるかもしれません。

確かに一時的な盛り上がりはありましたが、グラフを見るとその効果は限定的で、ピーク時の水準には遠く及ばないことが分かります。

特に、これまで釣りを支えてきたベテラン層のリタイアや、新規で釣りを始めた層の定着不足が大きな課題となっています。

釣具市場にも「コロナバブル」とその反動が

釣り人口の減少傾向とは裏腹に、釣具市場はコロナ禍で一時的に特需を享受しました。

  • 2019年: 約1,405億円
  • 2021年: 1,790億7,000万円(コロナバブルのピーク!)

密を避けられるレジャーとして釣りが注目され、多くの人が釣具店に足を運びました。しかし、この好景気は長くは続きませんでした。

  • 2022年: 1,686億2,000万円
  • 2023年(見込み): 1,492億6,000万円

2021年をピークに、市場規模は縮小に転じています。

これは、コロナ禍の反動減に加え、小売店が抱える過剰在庫の調整や、円安・原材料高による仕入コストの上昇が影響していると考えられます。

一方で興味深いのは、釣り人口が減っているにもかかわらず、市場規模が比較的高い水準を維持している点です。

これは、一人あたりの釣具購入額が増加していることを示唆しており、特に高価なルアーや高性能な竿・リールといった製品の需要が高まっていることが背景にあります。

特に、ソルトルアー市場の成長が、全体を下支えしている構図が見えてきます。

なぜ、日本の釣り業界は縮小するのか?

市場縮小の背景には、複数の要因が複雑に絡み合っています。

  1. 若年層・新規参入者の不足: 釣り人口の項目で触れたように、釣りの裾野が広がりにくい現状があります。
  2. コロナ禍の反動減と在庫調整: 特需の後の正常化プロセスの中で、需給バランスが崩れています。
  3. 為替や原材料高によるコスト上昇: 企業努力だけでは吸収しきれないコスト増が利益を圧迫しています。
  4. 異常気象・災害の増加: 猛暑や台風、豪雨などにより釣行機会が減少し、釣り場が閉鎖されるケースも増えています。
  5. マーケティングの課題: これまでのマーケティングがベテラン男性層に偏重し、女性やファミリー層、若年層へのアプローチが不足しているという指摘もあります。
  6. 環境問題と釣り場減少: 外来魚問題や公共工事による釣り場の減少、また釣り人によるゴミ問題なども、長期的な視点で見ると釣り離れの一因となり得ます。

世界と日本の差、そして未来へ向けて

日本の釣業界が縮小傾向にある一方で、驚くべきことに世界の釣具市場は全体として拡大傾向にあります。

2023年の世界市場規模は13.9億米ドルで、2032年には20.3億米ドルに成長すると予測されています。

日本の大手釣具メーカーの中には、海外事業を拡大することで売上を伸ばしている企業もあり、これは希望の光とも言えるでしょう。

日本の釣業界が再び活気を取り戻すためには、単に製品を開発するだけでなく、以下の点に取り組む必要があるのではないでしょうか。

  • 新たな釣り人口の開拓: 女性やファミリー層、若年層など、これまでアプローチが手薄だった層への魅力的な情報発信や、気軽に始められる体験の提供。
  • 環境への配慮: 生分解性ルアーや鉛不使用の重りなど、地球に優しい釣具の開発と普及。
  • 釣り場の保全とマナー向上: 釣り人が安心して楽しめる場所の確保と、ゴミ問題などの解決に向けた取り組み。

釣りは、自然と触れ合い、豊かな時間を過ごせる素晴らしい趣味です。

この文化を次世代に繋いでいくために、業界全体、そして私たち釣り人一人ひとりが、現状と課題に向き合うことが求められています。

釣り業界に忍び寄る影? データで見る市場縮小の現状と未来。釣太郎

 

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