【シュールストレーミング完全解剖】なぜ臭い?他の缶詰との決定的な違いを徹底解説【発酵の地獄】
スウェーデン発の「世界一臭い缶詰」──それが**シュールストレーミング(Surströmming)**です。
SNSやYouTubeでは、開けた瞬間に人々が顔をしかめたり、吐きそうになったりする動画が数多く見られます。
「本当にそこまで臭いのか?」「なぜそんな食べ物が存在するのか?」と疑問に思ったことはありませんか?
本記事では、
・シュールストレーミングがなぜあそこまで臭いのか
・その仕組みと製造工程
・他の缶詰と何が違うのか
・なぜ今も作られ続けているのか
を、科学的・文化的な視点から事細かに解説します。
◆シュールストレーミングとは?
シュールストレーミングとは、スウェーデン北部の伝統的な発酵食品であり、バルト海で獲れる**ニシン(Baltic Herring)**を塩漬けして発酵させたもの。
そのままでは傷みやすい魚を、塩と発酵の力で保存する知恵から生まれた食品です。
しかしその最大の特徴は、**常識では考えられないほど強烈な「臭い」**です。
◆製法の概要:シュールストレーミングは「発酵が止まらない」
通常の缶詰は、加熱殺菌をして発酵や腐敗を止めたうえで密閉します。
ところが、シュールストレーミングは加熱せず、密閉後も発酵が続くという異例の製造方法を取っています。
発酵の工程(簡略版)
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ニシンを塩水で軽く下漬け(約2週間)
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さらに発酵液に漬けて木樽で熟成(1~2か月)
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加熱せずに缶に詰めて密閉
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缶の中で発酵がさらに進行する
この時点で、缶の内部では乳酸菌や酵母、嫌気性細菌によって化学反応が活発に起こっており、「缶が膨らむ」現象すら発生します。
◆なぜ臭い?臭いの正体を科学的に分析
あの耐え難い臭いの正体は、以下の**揮発性有機化合物(VOCs)**の集合体です。
| 化合物名 | 臭いの特徴 | 発生原因 |
|---|---|---|
| 酪酸(Butyric Acid) | 腐ったバター・嘔吐物 | 脂肪の分解 |
| 硫化水素(H₂S) | 腐った卵 | タンパク質の分解(嫌気性菌) |
| カダベリン(Cadaverine) | 死体臭 | アミノ酸の分解(腐敗過程) |
| プトレシン(Putrescine) | 腐肉臭 | 蛋白質が細菌で分解された際に生成 |
| アンモニア(NH₃) | 刺激臭 | 分解過程で発生 |
| ジメチルアミン | 生臭い魚のにおい | 魚の成分が分解されることで発生 |
このように、「腐敗」に近い化合物が発酵の副産物として缶内で生まれ続けているのが臭いの原因なのです。
◆他の缶詰とどう違う?
では、シュールストレーミングは他の缶詰と何が違うのでしょうか?
以下の表をご覧ください。
| 項目 | シュールストレーミング | 一般的な魚の缶詰(サバ缶・ツナ缶など) |
|---|---|---|
| 原料 | 生のニシン | 加熱処理済の魚 |
| 製造方法 | 発酵 → 缶詰 → 発酵継続 | 加熱 → 殺菌 → 密封 |
| 発酵の有無 | 有(強烈) | 無(または極微量) |
| 開缶後の臭い | 激臭(悪臭) | 香ばしい or ほとんど無臭 |
| 缶の膨張 | あり(継続発酵のため) | 基本なし |
| 賞味期限 | 約1年(実質無期限) | 数年(保存安定) |
| 食文化的役割 | 地域の伝統 | 現代的な保存食品 |
つまり、シュールストレーミングは**保存食のふりをした“生きた発酵食品”**であり、缶の中でも時間と共に味も臭いも変化していく非常に特異な存在なのです。
◆なぜ缶が膨らむ?破裂の危険性は?
発酵により、缶の内部では炭酸ガスやアンモニアなどの気体が発生し続けます。
これにより、缶は徐々に膨張し、「パンパンに膨れた缶」が完成します。
この状態は物理的にも危険で、以下のようなトラブルも報告されています。
・飛行機で持ち込みを拒否される(気圧変化で破裂リスク)
・宅配便で“危険物扱い”になることがある
・無理に開けようとして中身が吹き出す
そのため、開缶時は必ず屋外で行うことが推奨されています。
◆なぜそんなに臭いのに、今も食べられているのか?
最大の疑問、それは「なぜこれほど臭いのに、今も生産・消費され続けているのか?」という点でしょう。
① 文化的伝統
スウェーデン北部では、夏の収穫期に家族や友人と囲む伝統的なごちそうとして親しまれています。
「臭い」は文化的な個性であり、地域のアイデンティティの一部でもあります。
② 食べ方の工夫
実は、そのまま食べる人は少ないのです。
下記のように、臭いを抑える工夫が施されています。
・パン(トンブロード)で巻いて食べる
・バターやジャガイモ、玉ねぎで臭いを中和
・酸味のある飲み物(ビール・アクアヴィット)と一緒に食べる
つまり、**「単品で食べてはいけない食品」**とも言えます。
◆なぜ日本では受け入れが難しいのか?
日本にも発酵食品は多くありますが、シュールストレーミングほど臭い食品はほぼ存在しません。
・納豆:臭いがあるがマイルド
・くさや:比較的近いが、加熱処理されている
・しょっつる・いしる:旨味系の発酵、臭いは控えめ
日本の発酵文化は**「旨味と香ばしさ」に重点があるのに対し、シュールストレーミングは「臭いすら個性とする」極端な発酵食文化**といえます。
◆実際に食べた人の感想(国内外)
・「開けた瞬間、家族全員が逃げた」
・「台所に充満して、1週間は魚屋みたいな臭いが消えなかった」
・「食べてみると意外とマイルド。ただ、臭いとのギャップに脳がバグる」
・「味は塩辛くて発酵したチーズっぽい。ビールに合う」
・「勇気がいるけど、一度は体験してもいいかも…」
◆まとめ:シュールストレーミングの“臭さ”は文化と科学の融合
| 視点 | 解説 |
|---|---|
| 科学的理由 | 発酵により臭気物質が多量発生するため |
| 製造工程 | 加熱せず、缶内で発酵が継続される特異な缶詰 |
| 文化的背景 | スウェーデン北部の伝統食としての存在意義 |
| 他の缶詰との違い | 通常は加熱殺菌されるが、シュールは“生きている” |
| 食べ方 | 臭いを中和するレシピや食材と合わせることで、風味が活かされる |
◆おまけ:もし日本で作ったら…?
例えば、サンマやアジで同じ製法を用いたとしたら、どうなるでしょうか?
・暑い日本の気候では、腐敗が進みやすく食中毒のリスク
・衛生基準の問題で流通が難しい
・文化的に「臭い=NG」が強く受け入れにくい
したがって、シュールストレーミングの存在は、**スウェーデンという国と風土、文化があって初めて成立する「奇跡の缶詰」**とも言えるのです。
ご希望があれば、次回は「実際の開け方・食べ方ガイド」や「くさや・納豆などとの比較」などのテーマで続編記事も可能です。お気軽にご依頼ください。

