釣りにおいてよく耳にする言葉が「タナを合わせろ」です。
サビキ釣りでも、アオリイカのウキ釣りでも、フカセ釣りでも、釣果を出す人ほど口にするのがこのフレーズ。
では、なぜ目的の魚やイカにタナ(水深)を合わせる必要があるのでしょうか?
これは単なる経験則ではなく、魚類やイカの生理学・行動学に基づいた科学的な理由があります。
本記事では、その背景をわかりやすく解説し、「タナ取り」がいかに釣果に直結するかを掘り下げていきます。
① 魚やイカは「水深ごとに住み分け」している
魚やイカは海全体を自由に泳ぎ回っているわけではありません。
多くの種類が水深ごとに棲み分けて生活しています。
その理由は以下の通りです。
・水温の違い
海は表層と深層で温度が大きく異なります。
魚やイカは変温動物であるため、自分の体温を外部環境に依存します。
最も代謝が効率的になる「適水温帯」にとどまる傾向があります。
・酸素濃度の違い
表層は光合成により酸素量が豊富。
しかし水深が深くなると酸素濃度が低下し、住める魚種が限られてきます。
・餌生物の分布
小魚やプランクトンは光の届く層に集まりやすく、それを狙う中型魚も同じタナに集中。
逆に底生甲殻類を食べる魚は海底付近に集まります。
つまり「狙う魚の生活水深=タナ」を意識しないと、そもそも仕掛けが届いていないことになります。
② 光と色の科学:魚やイカの視覚に影響するタナ
海中では、太陽光は水深が深くなるにつれて吸収され、色ごとに届く距離が変わります。
・赤い光 → 数mで吸収されて見えなくなる
・黄色や緑 → 中層(10〜30m)まで届く
・青 → 最も深くまで届き、100m以上でも見える
魚やイカの目はこの光環境に適応しており、「自分の見やすい環境=好むタナ」に集まります。
たとえばイカは夜間に表層まで浮上しますが、それは光量の変化とプランクトンの動きに合わせているのです。
③ 水圧と浮き袋の関係:魚がタナを変えにくい理由
魚は浮き袋(鰾)を使って浮力を調整しています。
しかし急激な水深移動は浮き袋のガス調整が追いつかず、体に負担がかかります。
そのため、魚は基本的に一定のタナにとどまる習性を持ちます。
つまり狙う魚がいる層に仕掛けを入れなければ、目の前を通すことはできません。
イカの場合は浮き袋を持たないものの、水圧や餌場の位置の影響を受けて、やはり特定の層に定位する傾向があります。
④ エサの分布=魚の分布
魚やイカは「餌がある場所」に集まります。
この餌の分布もタナによって大きく変わります。
・プランクトン → 表層〜中層に集まる
・小魚 → プランクトンを追って中層を回遊
・甲殻類・貝類 → 海底に多い
例えば、アジやイワシを狙うなら中層。
チヌやカサゴを狙うなら海底。
アオリイカなら小魚や甲殻類のいる浅場〜底付近。
ターゲットの餌がどこにいるかを把握することで、自然とタナも決まるのです。
⑤ アオリイカの場合:タナと捕食行動
アオリイカは特にタナ合わせの重要性が顕著なターゲットです。
・日中 → 海底付近の岩陰でじっとしている
・朝夕 → 小魚を追って中層〜表層に浮く
・夜間 → 灯りに寄って表層に集まる
つまり時間帯や環境によって「タナが変わる」生き物です。
釣れる人はこの変化を意識して棚を調整し、釣れない人は「同じ深さのまま粘る」ことで差が生まれます。
⑥ 科学的根拠まとめ:「タナ取りは釣果直結」
魚やイカとタナを合わせる必要がある理由を整理すると以下の通りです。
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水温帯の違い:魚は自分の適水温に集まる
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酸素量の違い:酸素濃度の高い層に魚が多い
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光と視覚:見やすい光量の層に定位する
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浮き袋の制約:急に水深を変えられないため、特定のタナに滞在
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エサの分布:獲物がいる層に集まる
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イカの習性:時間帯ごとにタナを変えるが、行動はパターン化されている
これらの科学的理由により、「タナ取り=釣果直結」と言えるのです。
⑦ 釣り人が実践すべき「タナ取り」のコツ
・アタリがない時は50cm〜1m単位で深さを調整
・朝夕は浮いたタナ、日中は海底付近を意識
・マキエ釣りはコマセとサシエのタナを一致させる
・ヤエン釣りはアジを海底まで沈める工夫をする
・エギングはカウントダウンでタナを探る
これらを習慣化すれば、同じ釣り場でも釣果は大きく変わります。
まとめ
釣りの基本は「目的の魚やイカとタナを合わせること」。
その理由は単なる経験談ではなく、水温・酸素・光・浮力・餌の分布といった科学的要因によって裏付けられています。
釣れないときに竿や仕掛けを疑うよりも、まずは「タナが合っているか?」を確認してみましょう。
魚もイカも、自分たちの都合で棲むタナを選んでいます。
その層に仕掛けを入れられるかどうかが、釣果を分ける最大のポイントなのです。


