アジといえば「中層を泳ぐ魚」というのが釣りの常識です。
しかし、冬の南紀地方で大型の「尺アジ」を狙う場合、そのセオリーが通用しないことが多々あります。
ウキ下をいくら調整しても食わないのに、カゴ釣りや底カゴで「海底スレスレ」を攻めた人だけが連発する。
なぜ、冬のデカアジは底にへばりつくのでしょうか。
今回は、南紀の海流特性とアジの生態から、その「意外な理由」を深掘りします。
見出し1:最大の理由は「水温の安定」にある
変温動物である魚にとって、急激な水温変化は命に関わるストレスです。
冬場、冷たい北風にさらされた海面付近(表層)の海水は、急速に冷やされます。
冷やされた水は重くなるため沈んでいきますが、海底付近の水塊は、地熱や黒潮の分流の影響もあり、表層に比べて水温が安定しています。
南紀の海は黒潮の影響で比較的温暖ですが、それでも真冬の表層は冷え込みます。
体力を温存したい大型のアジは、冷たく変化の激しい「中層〜表層」を避け、居心地の良い「海底の布団」に潜り込んでいる状態なのです。
見出し2:回遊しない「居着き(キアジ)」の習性
アジには大きく分けて2つのタイプがいます。 外洋を泳ぎ回る黒っぽい「クロアジ(セグロ)」と、岩礁帯に定着する黄色っぽい「キアジ(ヒラアジ)」です。
南紀の磯や堤防周りで釣れる脂の乗った尺アジは、多くの場合、後者の「居着き型」です。
彼らはもともと、海底の障害物(シモリ)や地形変化に身を寄せる習性が強い魚です。
水温が下がり活性が落ちると、エサを求めて中層まで浮き上がる元気な個体は減り、住処である海底の岩陰でジッとしている時間が長くなります。
そのため、エサを彼らの鼻先(海底)まで届けてやる必要があるのです。
見出し3:プランクトンの沈下と省エネ捕食
冬場は植物プランクトンの活動が低下し、海水の透明度が上がります。
アジのエサとなる動物プランクトンや多毛類(ゴカイの仲間)の一部は、日中や水温の低い時期、海底付近や砂の中に潜んでいることが多いです。
大型のアジは、わざわざエネルギーを使って中層の薄いエサを追いかけるよりも、海底付近に溜まっているエサや、底から湧いてくるエサを待ち伏せして捕食する「省エネモード」に入っています。
これが、コマセ(撒き餌)を撒いてもなかなか浮いてこない原因の一つです。
見出し4:攻略の鍵は「タナとり」と「ハリスの長さ」
この理由を知っていれば、対策は明確です。
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タナは底ベタ: 通常のサビキやウキ釣り感覚ではなく、オモリが底に着くか着かないかのギリギリを攻めます。 根掛かりのリスクはありますが、尺アジの回遊層はその「リスクのある場所」です。
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重めの仕掛けで急潜行: 中層のエサ取り(スズメダイやネンブツダイなど)をかわし、一気に大型アジのいる底層へエサを届ける工夫が必要です。
まとめ:冬の南紀は「底」を信じろ
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水温安定: 冷たい表層・中層を避け、暖かい底に避難している。
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魚の性格: 居着きの「キアジ」はもともと底の障害物が好き。
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省エネ: 動かずにエサが取れる場所を選んでいる。
「アジは中層」という固定観念を捨て、徹底してボトム(底)を意識すること。
それが、冬の南紀で黄金色に輝く尺アジを手にする最短ルートです。


