
深海魚が「ものすごい水圧の中でも破裂しない理由」は、実はとても合理的な“体の仕組み”によるものです。
順を追って分かりやすく説明します。
🌊 深海の水圧とは?
水圧は、水深が10メートル深くなるごとにおよそ1気圧(=約1kg/cm²)ずつ増加します。
たとえば、水深1000mでは約100気圧、つまり1cm²あたり100kgもの力が体全体にかかる計算になります。
このため、地上生物のような構造ではとても耐えられません。
🐟 深海魚が潰れたり破裂しない理由
① 内部の圧力も外と同じ
深海魚の体内には「空気を含む空間」がほとんどありません。
例えば、私たち人間や浅い海の魚には浮き袋(ガスで満たされた袋)がありますが、深海魚にはそれが無いか、特殊な構造で液体が入っている場合が多いのです。
つまり、外の圧力が高くても、体内の液体の圧力も同じく高くなるため、内外の圧力差がほとんど無いのです。
このため、潰れたり破裂したりすることがありません。
② 体が柔らかく、弾力がある
深海魚の筋肉や骨は、地上の生物に比べて「非常に柔らかい構造」です。
これは、外部からの圧力変化を吸収するための工夫です。
硬い骨や厚い筋肉では圧力を受け止めきれず、破損してしまう可能性があります。
一方で深海魚は「ゼラチン質(ぷにぷにした組織)」でできており、外圧を受けても形を保てるのです。
たとえば、デメニギス(透明な頭の魚)やリュウグウノツカイなどが典型例です。
③ 水分が多い=圧縮されにくい
深海魚の体のほとんどは水分でできています。
水は非常に圧縮されにくい物質なので、外から圧力をかけてもほとんど体積が変わりません。
つまり「つぶれにくい」体です。
④ タンパク質や細胞構造も“高圧対応型”
深海魚の細胞内では、通常の魚にはあまり見られない**特殊な分子(トリメチルアミンオキシド=TMAO)**が多く含まれています。
これは、圧力でタンパク質が変形しないように安定化させる働きがあります。
圧力が高いと酵素やタンパク質の働きが壊れてしまうため、このTMAOが“生体の潤滑剤”として機能しているわけです。
ちなみに、このTMAOが深海魚の独特なアンモニア臭(いわゆる「深海魚くさい匂い」)の原因にもなっています。
⚠️ 逆に、深海魚を引き上げると破裂する理由
深海魚が地上近くに引き上げられると、「外圧が急に減る」ため、今度は体内の圧力が外より高くなってしまいます。
これにより、体の組織が膨張したり、内臓が飛び出したり、目が飛び出したりすることが起こります。
つまり、普段は“外と内の圧力が釣り合っている”から平気で、
圧力差が急激に変わると耐えられなくなるのです。
🔬 まとめ
| 要素 | 深海魚の適応 |
|---|---|
| 浮き袋 | ない or 液体で満たされている |
| 骨・筋肉 | 柔らかく弾力がある |
| 体の水分量 | 非常に多い(圧縮されにくい) |
| タンパク質 | 高圧下でも機能する構造 |
| 匂いの原因 | TMAOが多く含まれる |
深海魚は「水圧を防ぐ」のではなく、「水圧と共存する」生物です。
その環境でこそ正常に生きられるよう進化しており、むしろ地上のような“低圧環境”では生きていけません。
──だからこそ、あの奇妙で幻想的な姿を保っていられるのです。

