魚たちの行動は、主に水温、日照時間、そしてエサの量という3つの大きな要因によって決まります。 。 黒潮が流れる和歌山の海では、これらの変化が魚たちのドラマチックな生態を一年を通して見せてくれます。 。
🌸 春(3月~5月):生命の目覚めと旅立ちの季節
春は、海水温が徐々に上昇し始め、魚たちの活動が活発になる季節です。 。 多くの魚にとって、子孫を残すための重要な時期を迎えます。 。
- 産卵のための「浅場への移動」:
- 冬の間、水温の安定した深場で過ごしていたマダイ(真鯛)などが、産卵のために沿岸の浅い場所へとやってきます。
- 産卵を控えたこの時期の魚は、体に栄養をたっぷりと蓄えているため、脂がのって非常に美味しくなります。
- これが「桜鯛」と呼ばれる春の旬の理由です。
- 黒潮に乗って「北への大回遊」:
- カツオ(鰹)などの回遊魚は、暖かい黒潮に乗ってエサを追い求め、日本の太平洋沿岸を北上し始めます。
- この時期のカツオは、長旅に備えて活発にエサを食べるため、身が引き締まり、さっぱりとした味わいが特徴です。
- 和歌山では、この北上するカツオを「ケンケン漁」という一本釣りで漁獲します。
- 稚魚の誕生:
- 春に生まれたシラス(イワシの稚魚)は、プランクトンが豊富な沿岸部で群れをなして成長します。
- 春のしらす漁は、この生態を利用したものです。
🌻 夏(6月~8月):最も活発に、食欲旺盛な季節
夏は水温が最も高くなり、魚たちの活動はピークに達します。 。 成長するために、非常に活発にエサを探し回る時期です。 。
- 活発な「索餌(さくじ)行動」:
- タチウオ(太刀魚)やアジ(鯵)などは、日中は少し深い場所にいますが、夜になるとエサを求めて海面近くまで上がってくる習性があります。
- 夏の夜釣りでタチウオが狙えるのはこのためです。
- ハモ(鱧)も夜行性で、日中は砂や泥の中に潜み、夜になると小魚や甲殻類を捕食します。
- 食欲旺盛な夏の魚は、旨味が強く、さっぱりとした味わいが楽しめます。
- 縄張り意識と成長:
- 岩礁などに住むアワビやトコブシなども、海藻が繁茂する夏に活発に活動し、成長します。
- 川では、アユ(鮎)が縄張りを持ち、石についた藻を食べて成長する最も美味しい季節です。
🍁 秋(9月~11月):冬に備え、栄養を蓄える季節
秋は、水温が下がり始めることで、魚たちが冬を越すための準備に入る季節です。 。 「食欲の秋」は、魚たちにとっても同じです。 。
- 越冬のための「南へのUターン」:
- 春に北上したカツオは、水温の低下とともに、より暖かい海域を目指して南下を始めます。
- これが「戻りガツオ」です。
- 春とは違い、夏から秋にかけて北の海で豊富なエサをたっぷり食べて丸々と太っているため、脂がこってりと乗っています。
- 脂肪を蓄える「荒食い」:
- サバやブリ、カマスなども、冬の産卵や厳しい寒さに備えて食欲が旺盛になります。
- この時期の魚は脂質を多く含み、濃厚な味わいになるため、「秋サバは嫁に食わすな」といった言葉があるほどです。
- 深場への移動準備:
- 高級魚として知られるクエは、秋になると浅場で活発にエサを食べ、冬に向けて深場へと移動する準備を始めます。
- この時期が最も味が良いとされています。
⛄ 冬(12月~2月):静かに耐え、旨味を凝縮させる季節
冬は、多くの魚にとって活動が鈍くなる厳しい季節ですが、寒さの中で身が引き締まり、旨味を凝縮させる魚も多くいます。 。
- 「深場での越冬」:
- 多くの魚は、水温が比較的安定している深場へ移動して、エネルギーの消費を抑えながら冬を越します。
- ヒラメ(平目)は、水温が下がることで身が厚く、締まり、上品な旨味が増すため「寒ビラメ」として珍重されます。
- 南下と産卵:
- ブリ(鰤)は、産卵のために北海道などから南下してきます。
- この時期のブリは「寒ブリ」と呼ばれ、脂の乗りが最高潮に達します。
- 寒さに強い魚の活動:
- マグロ(鮪)のような大型の回遊魚は、冬でも休むことなく広大な海を泳ぎ続けます。
- 那智勝浦で水揚げされる生マグロは、この時期、特に脂がのって美味しくなります。
- 少し変わったところではウツボなども、寒さに強く冬に旬を迎えます。
このように、魚たちの行動は季節のサイクルと密接に関係しており、それが各々の「旬」となって私たちの食卓に届けられているのです。 。 次に魚を食べる機会があれば、その魚がどんな季節を過ごしてきたのか、少し想像してみるのも面白いかもしれませんね。

