秋の南紀地方や太平洋沿岸では、堤防やサーフで「メッキ」と呼ばれる魚がよく釣れます。
メッキは、ロウニンアジ・ギンガメアジなどの稚魚の総称で、成魚になれば1m近くに成長する外洋性の回遊魚です。
しかし、この可愛らしい魚たちは冬の低水温期に大量死し、「回遊死滅魚」として知られています。
釣り人なら一度は疑問に思うでしょう。
「なぜ水温が下がる前に南下して暖かい海に戻らないのか?」
今回は、その理由を生態・海洋環境・行動特性から徹底解説します。
メッキは「回遊死滅魚」
まず知っておきたいのは、メッキの生活史です。
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出生地は熱帯・亜熱帯
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主な産卵地はフィリピン沖や南西諸島周辺などの暖海域。
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黒潮に乗って稚魚が北上し、南紀や本州南岸まで運ばれます。
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秋は沿岸に接岸
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プランクトンや小魚を追って港やサーフに入り、活発に捕食。
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堤防釣りでよく釣れるのはこの時期。
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冬の低水温で死滅
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水温が16℃を下回ると活性が落ち、14℃以下で衰弱死する個体が急増。
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これが「回遊死滅魚」と呼ばれる所以です。
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なぜ南下しないのか?
一見不思議ですが、これは行動本能・体力的制約・海洋構造が複雑に絡んでいます。
1. 回遊本能が“北上型”に特化している
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メッキの稚魚は黒潮に乗って**一方向(北上)**に運ばれる設計の回遊魚です。
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生まれてすぐに北から南へ戻る本能や回遊ルートを持たないため、自力で南下する習性が弱いのです。
2. 稚魚の体力不足
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秋に接岸するメッキはまだ体長10〜20cm程度。
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黒潮本流へ戻るには沖合まで数十km泳ぐ必要があり、体力と耐久力が不足しています。
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外洋は波・潮流が強く、捕食者も多いため、生存率が極端に低下します。
3. 沿岸の「餌の豊富さ」に留まってしまう
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南下のために沖へ出るより、沿岸の小魚や甲殻類を食べていたほうが短期的に有利。
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その結果、水温低下期に沿岸に取り残されることになります。
4. 海流構造の影響
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南紀沿岸は黒潮が沖合を通るため、沿岸水は冬になると急激に冷えます。
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稚魚が黒潮本流まで到達できなければ、温暖な海域への移動は困難です。
釣り人目線での影響
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秋は高活性でルアー・フライに好反応
→ 表層〜中層を広範囲に回遊するため、堤防・河口・サーフのどこでも狙える。 -
冬は急に釣れなくなる
→ 水温低下で活動停止、その後多くが死滅。
「回遊死滅魚」ならではの儚さ
メッキは、南紀や本州沿岸では繁殖できない運命を背負っています。
生まれた場所に戻ることなく、秋の数ヶ月を全力で生き抜き、冬の訪れとともに命を終える——。
その儚さこそが、秋のメッキ釣りを特別なものにしているのかもしれません。
まとめ
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メッキは黒潮に乗って北上するが、南下の本能が弱く沿岸に残ってしまう。
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稚魚の体力不足、沿岸の餌の豊富さ、海流構造が南下を阻む要因。
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水温14℃以下で急速に衰弱し、多くが冬に死滅する。
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秋の釣期は短く、釣れる時期を逃すと再び来年まで会えない。


