はじめに
「シラス漁をやめれば海の魚が増える」——。
一見もっともらしく聞こえるこの意見、実際はどうなのでしょうか?
確かに、シラスは多くの魚のエサになる存在です。
では、シラスを捕らずに自然のまま残しておけば、海の中でエサが増え、結果として大型魚が増えるという理屈には根拠があるのでしょうか?
AIが膨大な海洋生態データと生態学の知見から、科学的にこの疑問に答えます。
シラスとは何か?
まず、「シラス」という言葉は漠然としており、一般的には以下のような稚魚を指します。
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カタクチイワシ
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マイワシ
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ウルメイワシ
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イカナゴの稚魚
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アユの稚魚(地域による)
つまり、シラス漁はイワシ類などの稚魚を漁獲する漁業であり、これらは確かにマグロ・ブリ・カツオ・アジなど、多くの魚の重要なエサです。
「シラス漁をなくせば魚が増える」説の根拠
この主張の背景には以下のような考えがあります。
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稚魚を獲らなければ、自然界で成長して大型魚のエサになる
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シラスを大量に獲ることで食物連鎖の下位を破壊している
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生態系バランスの崩壊を防ぐべき
確かに一部は正しいですが、「シラス漁を止めれば魚が増える」という因果関係は単純化されすぎているといえます。
AIによる分析:シラス漁をやめたらどうなるか?
AIは以下の4つのシナリオを用意し、それぞれにおいて予測される変化を評価しました。
【シナリオ①】
シラス漁を全面中止 → 稚魚の生存率が劇的に上がる?
実際は違います。
シラスの天敵は魚だけでなく、クラゲ・大型プランクトン・海鳥・他の小魚など。
自然界では「シラスの大量死」が当たり前で、放っておいても9割以上が死ぬとされています。
シラス漁で獲っているのは、もともと生き残れない分の一部ともいえるのです。
【シナリオ②】
シラスが海に大量に残る → 大型魚が爆発的に増える?
答えはNO。
エサが増えても、それを食べる魚の数には限界があります。
魚の個体数は、「エサ+水温+酸素+産卵場所」など、複雑な要因で制御されているからです。
さらに、シラスが増えすぎると、赤潮・酸欠・バランス崩壊などのリスクも増大します。
【シナリオ③】
一部地域でのみシラス漁を中止した場合 → 他地域の漁師が漁獲圧を増加
これはよくある現象で、シラス漁の負担が他エリアに分散されるだけの可能性も。
全体としての漁獲圧は変わらず、生態系に大きなプラス効果は出にくいと考えられます。
【シナリオ④】
漁獲調整+モニタリングの強化 → 生態系にやさしい漁業へ
AIが最も有効と評価したのがこの方法。
シラス漁をすべてなくすのではなく、適切な時期と量を守ることで資源保全と漁業を両立することが可能です。
近年は、産卵前の個体を避けるなど、科学的なアプローチが導入されています。
シラス漁の現実:食文化と経済
日本は世界でも珍しく、シラスをそのまま食べる文化を持つ国です。
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しらす丼
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釜揚げしらす
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ちりめんじゃこ
これらは地域経済や観光資源としても重要で、和歌山・静岡・高知などでは地元の基幹産業になっています。
シラス漁をなくせば、地域経済に大きな打撃を与えることは確実です。
結論:単純な「禁止」ではなく、賢く使う選択を
AIの結論はこうです。
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✅ シラス漁を完全にやめても、大型魚が爆発的に増えるとは限らない
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✅ むしろ自然死や他の捕食圧でほとんどが減ってしまう
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✅ 持続可能な漁獲管理とモニタリングの強化が最も効果的
シラス漁は悪ではありません。
知恵と科学によってバランスを取り、漁業も生態系も両立する未来が理想です。
まとめ:シラス漁をめぐる議論を冷静に
「魚が減ったのはシラス漁のせいだ!」という声もありますが、それはほんの一因にすぎません。
むしろ、気候変動・海水温の上昇・乱獲・海洋汚染など、複雑な要因が絡み合っています。
感情論に走るのではなく、データと科学に基づいた判断が今こそ求められているのです。
釣り人も、漁師も、消費者も、「賢い選択」をして、豊かな海を守っていきましょう。


