関西の夏といえば「ハモ(鱧)」。
骨切りして湯引きにし、梅肉を添えて食べる――この食べ方は、今や京都の夏の風物詩として定着しています。
でも、ふと思いませんか?
「どうしてこんなに“ハモ=夏の魚”として有名になったのか?」
「他の魚が獲れないから仕方なく食べてたのでは?」
この記事では、ハモが夏の定番魚として広まった理由と、その背景にある魚文化や季節性、
京都の食事情まで解説します。
■ ハモとはどんな魚?
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 分類 | ウナギ目ハモ科 |
| 大きさ | 60cm〜1m以上になる大型魚 |
| 生息域 | 瀬戸内海、紀伊半島、九州西岸などの内湾〜沿岸部 |
| 特徴 | 鋭い歯を持ち、全身に細かい小骨がびっしり |
| 漁法 | はえ縄、底引き網、延縄など |
ハモは小骨が非常に多いため、骨切りという特殊な技術が必須。
この一手間がかかるからこそ、料理人の腕が試される高級魚とも言えます。
■ なぜ「ハモ=夏の定番」となったのか?
● 理由①:夏に旬を迎える数少ない魚だった
・ハモは梅雨〜真夏にかけて最も脂がのり、身質がよくなる
・他の魚(マダイ、イサキ、ブリなど)は春〜初夏が旬で、夏は一時的に不漁になりやすい
→ 「夏に旨い魚が少ない」という季節性のすき間を埋めたのがハモだった
● 理由②:京都では新鮮な魚を手に入れづらかった
京都は海から遠い「内陸の都」。
江戸時代以前は流通も未発達で、活魚を京都まで届けるのは至難の業でした。
✅ そこで活躍したのが「生命力が強く、長距離輸送に耐えるハモ」!
・暑い夏でも生きたまま京都に届けられる
・他の魚は途中で傷んでしまうが、ハモは桶で生きたまま運搬可能だった
→ その結果、京料理=ハモの文化が生まれ、特に「祇園祭」などの行事食として定着していきました。
● 理由③:料理人の技術アピールに最適だった
ハモの調理には高度な「骨切り」技術が求められます。
・身を1cm間隔で細かく包丁を入れる「骨切り」は、プロの腕前の象徴
・熟練の板前しか扱えない=高級感と特別感が生まれる
→ ハモ料理は「粋な京料理」としての地位を確立していったのです。
■ ハモ料理の定番「湯引き×梅肉」の魅力とは?
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 湯引き | 骨切り後に熱湯でさっと湯通しし、氷水で締める調理法。ふんわりとした食感が魅力。 |
| 梅肉添え | 夏の暑さを和らげる酸味がハモの脂と絶妙にマッチ。 |
| ポイント | 骨切りによって小骨が口当たりを邪魔せず、誰でも美味しく食べられる。 |
■ 夏にハモが選ばれる3つの理由【まとめ】
| 理由 | 詳細 |
|---|---|
| ① 他の魚が不漁 | 夏は魚が痩せる季節。脂がのるハモは貴重な例外。 |
| ② 運搬に強い | 京都まで生きたまま届けられる唯一の魚だった。 |
| ③ 調理技術が光る | 骨切りによる「特別感」が高級料理の証となった。 |
■ 現代でも「ハモ=夏のごちそう」は健在!
今では流通も冷蔵技術も発達し、他の魚も年中手に入る時代になりました。
それでもハモが「夏の味覚」として特別扱いされ続けているのは、歴史的な背景と文化的価値が深く根付いているからです。
・京都や大阪の料亭では今も夏になるとハモ料理が登場
・スーパーや市場でも「骨切り済みハモ」が並び始めると、「夏が来たな」と感じる人も多い
■ 結論:ハモは「魚の旬」と「人の知恵」が生んだ夏の味覚
「なぜ夏にハモばかり食べるの?」という疑問の裏には、
-
夏に他の魚が少ない
-
京都で新鮮な魚を手に入れるための工夫
-
技術を活かした料理文化
こうした季節と食文化の知恵が息づいています。
ぜひ今年の夏は、湯引きハモに梅肉を添えて、日本の伝統的な“夏の涼”を味わってみてください。


