スーパーや釣り人の間では「天然の方が新鮮で美味しい」と言われがちですが、
菌の付着量という視点で見ると、実は天然魚の方がリスクが高いケースが多いのです。
今回はその理由と背景を、科学的な視点で分かりやすく解説します。
・天然魚の方が菌が多いと言われる理由
天然魚は、自然の海を自由に泳いで生きている魚です。
この自然環境こそが、菌の付着量を増やす原因となります。
◆ 理由1:海水中には常に細菌が存在
海水には以下のような微生物や細菌が含まれています。
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腸炎ビブリオ
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大腸菌
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リステリア菌
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クレブシエラ菌など
これらは、どんなにきれいに見える海域でも一定量存在します。
天然魚は、こうした菌を常に体表やエラ、内臓にまとっている状態なのです。
◆ 理由2:天然魚は死後処理が遅れがち
釣りで獲った魚や市場で流通する天然魚は、
死後の処理(神経締め、内臓除去、冷却)まで時間がかかる場合が多く、
その間に菌が増殖することがあります。
特に夏場の釣りや漁では、短時間で菌が爆発的に増えるため注意が必要です。
・では、養殖魚はどうか?
養殖魚は、陸地に近い管理されたいけすや施設で育てられています。
この環境が菌のリスクを抑える要因になっています。
◆ 理由1:定期的な水質管理と薬剤使用
養殖場では水質が定期的に管理され、
病気予防のために抗菌剤や消毒剤が使われることもあります。
その結果、病原菌の繁殖が抑えられているのです。
◆ 理由2:出荷前に「活締め」などの処理
養殖魚は出荷直前に「活締め」や「氷締め」などが施されることが多く、
流通の時点で菌の増殖リスクが低い状態で店頭に並びます。
結果的に、菌の付着量が少ない状態で消費者の手に渡るのが特徴です。
・ただし「養殖=完全に安全」ではない!
養殖魚であっても、以下のケースでは菌が問題になることがあります。
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いけすの管理が不十分な場合
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過密飼育によるストレスで免疫低下
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処理や輸送工程での温度管理ミス
つまり、「天然より菌が少ない傾向」はあるものの、
絶対安全とは言えないという点も覚えておきましょう。
・まとめ:菌の量は「環境と処理工程」で決まる
天然魚の方が菌の付着量が多いのは事実です。
しかし、それは自然の中で自由に泳ぐゆえの代償とも言えます。
一方で養殖魚は、管理の行き届いた環境によりリスクを抑えていますが、
その分、人工的で味が劣ると感じる人もいるかもしれません。
選ぶ際は「味」「安全性」「調理法」などを総合的に判断し、
加熱調理や冷却管理などのリスク回避策を意識して魚を扱うことが大切です。

