ヤエン釣りでアジを放された時、回収したアジがまだ動いていたら、そのまま投げ返すべきか迷うことはありませんか。
「さっきまで食べていたのだから、同じアジの方が安心するのでは?」
「いや、新しいアジの方が食いがいいのか?」
この判断が一匹を獲れるかどうかの分かれ道になることがあります。
今回は、アオリイカの「記憶」と「識別能力」に焦点を当て、バラした後のアジの扱いについて解説します。
1. アオリイカは自分の「食べかけ」を識別できるか?
結論から言うと、アオリイカが「これはさっき自分が食べていた個体だ」と明確に個体識別して執着している可能性は低いです。
彼らの行動原理は「所有権の主張」よりも「目の前の獲物の確保」にあります。
ただし、アオリイカは非常に目が良く、獲物のサイズや動きの特徴を瞬間的に記憶する能力は持っています。
そのため、放した直後に同じような動きをする物体(同じアジ)が目の前に落ちてくれば、「逃げた獲物だ!」と反応して再び抱きつく(追い食いする)ことはよくあります。
これは「自分の食べかけだから」という愛着ではなく、「手負いの獲物が近くにいる」という狩猟本能による反応です。
2. 「食べかけのアジ」と「新品のアジ」で食いつきは違う?
ここが重要なポイントですが、食いつきの反応(バイト)は明らかに違います。
アオリイカの捕食スイッチを入れる最大の要因は「動き」と「生命感」です。
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新品のアジ(元気): 海に入れた瞬間、元気に泳ぎ回り、イカから逃げようとする「不規則な動き」を見せます。 この動きがイカの狩猟本能を強烈に刺激し、遠くからでも飛びついてきます。
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食べかけのアジ(弱り・死に): 一度噛まれたアジは弱っており、動きが鈍いか、ただ漂うだけになります。 イカにとって「簡単に捕まえられる」メリットはありますが、リアクションバイト(反射食い)を誘発する力は弱くなります。
また、一度抱かれたアジには「イカの匂い」や「墨の気配」が付着していることがあり、
警戒心の強い大型のイカはこれを嫌う場合もあります。
3. 再利用すべきケース、交換すべきケース
では、実釣でどう判断すべきでしょうか。 状況別に使い分けるのが正解です。
【そのまま再投入(再利用)すべき時】
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アジを放して数秒~数十秒以内の場合: イカがまだ近くにいて、逃げた獲物を探している可能性が高い時です。 アジがまだ生きていれば、すぐに投げ返すことで「逃げ遅れた獲物」を演出し、即座に抱き直させることができます。
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手持ちのアジが少ない時: 温存策として、完全に死ぬまでは使うしかありません。
【すぐに新品に交換すべき時】
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バラしてから時間が経過した時: イカは興味を失って移動しているか、冷静さを取り戻しています。 ここで弱ったアジを入れても見切られるだけです。 元気なアジの波動で、遠くのイカや別のイカを呼び寄せる方が確率が上がります。
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アジの急所(頭の後ろ)が深くえぐられている時: すでに致命傷を負ったアジは海中ですぐに動かなくなります。 動かない死に餌(死にアジ)を抱くのは、よほど活性が高い時か、競争相手がいない時だけです。
まとめ
アオリイカは「自分の食べかけ」に執着しているわけではなく、「捕食しやすい獲物」を探しています。
一度放されたアジを覚えているというよりは、その場にある「チャンス」に反応しているだけなのです。
基本的には、「迷ったら新品のアジに交換」が釣果への近道です。
新鮮なアジが逃げ惑う動きこそが、一度警戒したイカのスイッチを再び無理やり入れる最強の武器になるからです。

