エギングをしていると、アオリイカがいかに「眼」を使ってエギを追ってくるかを実感します。
宝石のように美しく、そしてどこか謎めいた彼らの眼。
「一体、海の中で世界はどのように見えているのか?」
アングラーならずとも、誰もが一度は抱くこの疑問に、科学的な知見を交えてお答えします。
「視力は?」「夜は見える?」「本当に色盲なの?」
そして「まぶたが無いのに眠るの?」といった、すべての謎を解き明かしていきましょう。
驚異の視力!アオリイカはどれくらい見えている?
まず驚くべきは、その視力です。アオリイカの視力は、人間の視力に換算すると約0.64にもなると言われています。
一般的な魚の視力が良くても0.1〜0.2程度とされる中で、これは驚異的な数値です。
Q. 何メートル先まで見えている?
A. 一説には、約10cmのエギを30m先の距離からでも視認できるとされています。
もちろん、これは水の透明度など条件が良い場合ですが、私たちが考えている以上に、
遠くからエギの存在に気づいている可能性が高いです。
特に、彼らが獲物を捕らえる際は、腕側のやや斜め下方向の視軸を合わせるため、
フォール中のエギはくっきりと見えているはずです。
夜のハンター!夜間視力とエギのシルエット
アオリイカは夜行性のハンターでもあります。大きな瞳孔は、わずかな光も効率的に取り込むようにできています。
夜間は、色の情報よりも**「光の明暗(コントラスト)」や「シルエット」**を強く意識しています。
- グロー(夜光):エギ自体が発光し、暗闇での存在感を際立たせます。
- 赤テープや黒いエギ:月明かりや常夜灯の光を背にしたとき、最も濃いシルエットとして認識されやすく、アピールが強くなります。
夜のエギングでこれらのカラーが有効なのは、アオリイカの夜間視力の特性に合っているからなのです。
最大の謎「アオリイカは本当に色盲?」
多くの研究で「イカは色を識別する細胞(錐体細胞)を1種類しか持たないため、色盲である」というのが定説です。
彼らの世界は、基本的に**白黒の濃淡(グレースケール)**で見えていると考えられています。
Q. では、なぜエギのカラーで釣果が変わるのか?
A. いくつかの説がありますが、有力なのは以下の2つです。
- コントラストの違い:たとえ白黒の世界でも、色によって背景との馴染み方や、光の反射率が異なります。例えば、ピンクやオレンジは膨張して見え、青や緑は背景に溶け込みやすいなど、**「背景に対してどれだけシルエットが際立つか」**の違いをイカは敏感に感じ取っています。
- 偏光視力:人間にはない特殊能力として、**「偏光」**を見分ける力があります。水中の光の乱反射をカットし、獲物の鱗が発する僅かな光などを捉えることができるのです。エギの布や下地テープの種類によって、この偏光の具合が変わり、イカへの見え方が変化している可能性があります。
つまり、人間が見ている「色」そのものではなく、「光の質やコントラスト」の違いでエギを
選んでいる、というのが現状の有力な説です。
人間とはここが違う!イカの眼の特殊な構造
アオリイカの眼は、人間の眼と基本的な構造(カメラ眼)は似ていますが、決定的な違いがいくつかあります。
| 項目 | アオリイカの眼 | 人間の眼 |
| 瞳孔の形 | W型 | 丸型 |
| 盲点 | なし | あり |
| 水晶体 | 球形(動かしてピント調整) | 凸レンズ(厚みを変えて調整) |
| 特殊能力 | 偏光を見ることができる | なし |
特に注目すべきは**「盲点がない」**ことです。
人間の眼は、神経が眼球の内側から脳に繋がっているため、その結束部分に「盲点」が生まれます。
しかし、イカの眼は神経が網膜の外側についているため、死角がありません。
構造的には、人間の眼よりも合理的で高性能だと言えるかもしれません。
まぶたは無いけど眠るの?
鋭い質問ですね。お察しの通り、アオリイカには人間のような「まぶた」がありません。
水中では眼が乾く心配がないため、不要なのです。
Q. では、眠らないの?
A. いいえ、イカも眠ると考えられています。
完全に意識を失うわけではなく、左右の脳を交互に休ませたり、体の動きを止めて休息状態に入ったりします。
近年の研究では、睡眠中に人間のように体色をめまぐるしく変化させることが観察されており、
「イカも夢を見るのではないか?」と話題になりました。
まぶたがなくても、彼らなりの方法でしっかりと休息をとっているのです。
まとめ:イカの視点に立てば、釣果は変わる!
アオリイカは、私たちが想像する以上に高度で特殊な視覚を持っています。
- 0.64という高視力で、30m先のエギを見つける
- 夜はシルエットと光の明暗で獲物を捉える
- 色盲だが、光のコントラストや偏光でエギを見分けている
- 盲点がなく、人間よりも高性能な眼を持つ
- まぶたはなくても、しっかりと睡眠をとる
これらの事実を知ることで、エギのカラーや動かし方を選ぶ際の「なぜ?」がクリアになります。
次にフィールドに立つときは、ぜひアオリイカの視点になって、海の中を想像してみてください。
きっと、今までとは違った攻め方が見つかるはずです。


