「朝まずめの石鯛狙いで、磯にカンカンとピトンの音を響かせてはいけない」
これは、石鯛釣りの世界で古くから語り継がれる「鉄則」の一つです。
しかし、なぜそこまで厳しく言われるのでしょうか?
その理由を深く理解することは、磯の王者・石鯛に近づくための重要な第一歩です。
今回は、石鯛釣りにおいて朝一番のピトン打ちがなぜNGなのか、その科学的な理由と
石鯛の生態から徹底的に解説します。
理由1:石鯛が持つ「異常なほどの警戒心」
石鯛は、他の魚とは比較にならないほど賢く、臆病で、神経質な魚です。
美しい見た目と力強い引きから「磯の王者」と呼ばれますが、その本性は非常にデリケート。
自然界に存在しない音や気配には、極めて敏感に反応します。
特に、静寂に包まれた夜明け前の磯では、あらゆる物音が普段以上に響き渡ります。
この状況で金属製のピトンをハンマーで打ち付ければ、その音は石鯛にとって
「未知の脅威」の出現を知らせる警報となってしまうのです。
理由2:磯が音と振動を伝える「拡声器」になる
水中では音が空気中の約4.5倍の速さで伝わりますが、さらに重要なのが岩盤を通じた振動です。
釣り座となる磯は、一枚の大きな岩盤で海と繋がっています。
ピトンを打ち込む「カン!カン!」という甲高い金属音と、手に伝わるゴツゴツとした振動は、
岩盤を通じて直接海中の石鯛の巣やエサ場に響き渡ります。
魚は、体の側面にある**「側線(そくせん)」**という器官で、水の流れや振動を敏感に感じ取ります。
人間が耳で聞く音以上に、この振動が石鯛に強烈なストレスと危険信号を与え、
「この場所は危険だ」と判断させてしまうのです。
理由3:「朝まずめ」は一日で最も重要なゴールデンタイム
石鯛が最も活発にエサを捕食するのが、夜が明けてから日が昇るまでの「朝まずめ」です。
夜の間は巣穴でじっとしていた石鯛が、エサを求めて浅場にまで出てくる、一日で最大のチャンスとなります。
このゴールデンタイムにポイントを騒がしくしてしまうことは、食事をしに出てきた魚を巣穴に追い返すようなもの。
一度警戒モードに入った石鯛は、その日一日、なかなかエサを口にしなくなります。
つまり、朝のわずかな時間、静かにできるかどうかで、その日の釣果がほぼ決まってしまうと
言っても過言ではないのです。
ではどうすれば?ベテランの動き方
では、どうやって釣り座を構えれば良いのでしょうか。ベテランの石鯛師は以下のように行動します。
- 夜明け前に静かに釣り座へ:足音を忍ばせてポイントに到着します。
- 道具をそっと置く:クーラーボックスやタックルケースをドスンと置かず、静かに設置します。
- まずは竿を出す:ピトンを打つ前に、まずは仕掛けを投入し、場の状況を探ります。
- ピトンは後から:どうしてもピトンが必要な場合でも、朝日が完全に昇り、魚の警戒心が少し解けた時間帯を見計らって、静かに打ち込みます。岩の割れ目などを利用して、打つ回数を最小限に抑える工夫も重要です。
まとめ
石鯛釣りで朝のピトン打ちがNGなのは、単なるジンクスや迷信ではありません。
- 石鯛の異常な警戒心
- 岩盤を通じて伝わる音と振動
- 朝まずめという貴重な時間帯
これら全てが絡み合った、科学的根拠のある「釣るための知恵」なのです。
静寂を守り、王者に敬意を払うこと。それが、憧れの銀ワサ(大型石鯛)への一番の近道となるでしょう。


