魚は死後、筋肉中のATP(うま味成分の前駆体)が分解してイノシン酸などが生成されることで熟成旨味が出ます。
しかし以下のような魚はATP量が少ない、脂質や水分が特殊、または身質が柔らかすぎるため、熟成しても旨味が増えにくく、むしろ劣化が早まります。
・白身で水分が多い魚:キス、イワシ類、サヨリなど
・血合いが強く酸化しやすい魚:サバ、サンマ、カマスなど青物系
・柔らかいゼラチン質の魚:タチウオ、ハモなど
・小型魚全般:アジの小型サイズ、メバル、カサゴなどは熟成効果が薄い
代表的な魚と理由
1. サバ類(マサバ・ゴマサバ)
・血合いが極めて酸化しやすく、熟成中に脂の酸化臭(いわゆる生臭さ)が急激に進みます。
・釣ったその日、もしくは翌日までに締めて刺身やしめ鯖にするのがベスト。
・2日以上置くと酸化が進み「青臭さ」「鉄臭さ」が出やすい。
2. イワシ類(マイワシ・カタクチイワシ)
・脂が多く、水分が多いためATPが少ない。
・死後硬直後すぐから劣化が早く、熟成どころか翌日には身崩れ。
・釣ったその日に刺身や天ぷらで食べるのが最高。
3. サンマ
・サバ同様、脂質の酸化が極めて速い。
・冷蔵で熟成すると身がパサつき、旨味よりも酸味が勝つ。
・釣ったその日の刺身か塩焼きが最適。
4. タチウオ
・身がゼラチン質で水分が多く、熟成するとドリップ(旨味汁)が流出。
・鮮度が命で、釣ったその日の刺身や天ぷらが最も甘みが出る。
5. キス
・白身ながらATPが少なく、熟成しても旨味が出にくい。
・2日以上置くと水分が抜け、パサパサになりやすい。
6. ハモ
・ゼラチン質で水分が多く、旨味成分が少ない。
・活き締めしてすぐ湯引きするのが最も上品な甘みを味わえる。
7. カマス
・脂が多く酸化しやすい。
・1日置くと独特の臭みが出やすく、塩焼きなら釣ったその日がベスト。
熟成に向かない理由をまとめると
・ATP量が少ない:旨味に変換される成分自体が少ない
・脂が酸化しやすい:血合いの酸化→生臭さ
・水分が多い:ドリップ流出でパサつき
・身が柔らかい:時間経過で身崩れ・食感劣化
釣り人への実用アドバイス
・これらの魚は「神経締め」「血抜き」「海水氷」で即日食べ切るのが最良。
・どうしても翌日以降に持ち越す場合は、空気に触れない真空パック+氷温保存が最低条件。
・冷凍保存は熟成ではなく劣化を遅らせる目的と割り切る。
まとめ
熟成寝かせが絶大な効果を発揮するのは、マダイ・ヒラメ・ブリなどATP豊富で身がしっかりした魚です。
一方、サバ・イワシ・タチウオ・キス・ハモなどは「鮮度が命」。
釣ったその日の調理こそ最高のごちそうになります。
釣った魚をより美味しく食べたいなら、魚ごとの「熟成向き・不向き」を知り、締め方と保存方法を釣り場で決めることが大切です。

