イガミ(ブダイ)とは|南紀地方で愛される“祝魚”

イガミはスズキ目ブダイ科に属する魚で、地方名として「ブダイ」「イラ」など様々な呼び名があります。

和歌山・南紀地方では「イガミ」と呼ばれ、正月や祝い事の席に欠かせない縁起魚として古くから親しまれています。

特に田辺・白浜周辺では冬になると市場に多く並び、地元料理店でも煮付けや鍋料理として提供されます。


見た目の特徴

・体長は30~40cm前後が一般的で、大型になると60cmを超える個体も存在します。

・体型はやや側扁(横に平たい)で、丸みを帯びた体をしています。

・最大の特徴は、鳥のクチバシのように発達した前歯です。

この歯は複数の小さな歯が癒着して一枚の板状になっており、岩に付着する海藻や藻類を削り取るのに適しています。

・体色は生息環境や性別によって変化し、赤褐色から青緑色まで多彩です。


赤系と青系の違い

イガミには赤系青系と呼ばれる二つの体色タイプが存在します。

・赤系は全体的に赤褐色を帯び、身質が柔らかく煮付けに向いているとされます。

・青系は体表に青緑色が強く現れ、身が締まりやや硬めになる傾向があります。

同じ漁場でも赤系と青系が混在しており、釣り人や市場関係者は体色を見て調理法を選ぶことが多いです。

この色の違いは性別や成長段階とも関連しており、雌から雄へ転換する過程で体色が青系に変化する個体も確認されています。


生態と生活環

・主な生息域は水深3~20mほどの岩礁帯や藻場。

南紀・紀伊半島沿岸では一年を通じて見られますが、特に冬季は沿岸に接岸して釣りやすくなります。

・食性は草食性が強く、主に海藻や岩に付着した藻類を削り取って食べます。

これにより海藻が繁茂しすぎるのを防ぎ、藻場のバランスを保つ役割を果たしています。

・夜は岩陰や穴に潜り、口から粘液を分泌して自分の体を覆う「粘液カーテン」を作ります。

これは外敵や寄生虫から身を守るためと考えられています。


雌雄転換というユニークな特徴

イガミは雌雄同体の性転換魚で、成長に伴って雌から雄へ変化する個体が多く見られます。

若いうちは雌として生活し、群れの中で優位な個体が雄に転換して繁殖を担います。


雄へ変わる際には体色が鮮やかな青系へと変化し、頭部が角ばってくるなど外見にも変化が現れます。

このため、漁場で赤系・青系が混在する理由の一部は性転換過程にあると考えられます。


食味と地元での人気

・白身魚でありながら脂がほどよく、加熱するとふっくらとした食感になります。

・代表的な料理は煮付け、鍋、塩焼き、味噌汁など。

特に冬場は脂がのって旨味が強く、地元の市場では高値で取引されます。

・赤系個体は筋肉が柔らかく、煮付けや味噌汁に最適。

・青系個体は身が締まり、塩焼きや刺身など身の弾力を生かした料理に向きます。


釣り人にとっての魅力

・堤防や地磯から狙えるターゲットで、エサ釣りではオキアミや海藻を好んで食べます。

・強い引きと岩礁に潜り込む習性があり、やり取りにはパワーとテクニックが必要です。

・秋から冬にかけてが最も釣りやすく、特に水温が下がり始める11月~2月は大型が岸近くまで寄ります。


まとめ

イガミ(ブダイ)は、南紀地方で古くから愛される魚であり、

独特の歯と体色、そして雌雄転換という生態的特徴を持つユニークな存在です。

赤系と青系という体色差は、味わいや調理法に影響するだけでなく、性転換や成長段階を示す重要な手がかりでもあります。

食味も優れており、地元では祝いの席を彩る縁起魚として重宝されています。

釣り人にとっては強烈な引きが楽しめるターゲットであり、

冬の南紀釣行では一度は狙ってみたい魚と言えるでしょう。

 

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