◆ はじめに|モンゴウイカが海に浮かんでいるのを見たことがありますか?
かつて、南紀の港や堤防周辺では、
春〜初夏になると「海にぷかりと浮かぶ大きなイカ」をよく見かけたものでした。
それが「モンゴウイカ(カミナリイカ)」です。
近年はその光景もめっきり少なくなりましたが、今回のように1杯だけでも浮いていると、懐かしい“南紀の春”を思い出すという方も多いのではないでしょうか。
◆ モンゴウイカとは?
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 和名 | モンゴウイカ(関西では「カミナリイカ」) |
| 学名 | Sepia lycidas |
| 分布 | 関東以南の太平洋沿岸、南紀〜九州沿岸まで広く |
| 生態 | 春に浅場へ接岸し、藻場や岩場に産卵する |
| 体長 | 大型は胴長30cm以上、重さ3kg超も |
◆ なぜ海に浮かんで死んでいるのか?
① 産卵後に力尽きる“寿命の終わり”
モンゴウイカは、春になると藻場や岩場に産卵のために接岸します。
産卵を終えると、オスもメスも役目を終えて死にます。
その多くは海底に沈みますが、中には浮力がついて海面に浮かび上がる個体もいます。
これはアオリイカでも見られる現象ですが、
モンゴウイカは特に大型で浮きやすいため、春先の港ではこの光景が定番でした。
② 腐敗ガスの発生によって浮かぶ
死亡後のイカの体内では、時間の経過とともに発酵や腐敗によってガスが発生します。
特に内臓や墨袋付近にガスがたまりやすく、風船のように浮力を持って水面に現れることがあります。
この現象により、まるで漂流するように浮かぶ姿が見られます。
◆ なぜ近年は見かけなくなったのか?
① モンゴウイカの個体数が減少傾向
近年、南紀地域でもモンゴウイカの釣果は減少傾向にあります。
特に藻場の減少や海水温の変化により、
産卵場所に適した環境が減少し、接岸個体が減っていることが大きな要因です。
② 水質・潮流の変化による影響
黒潮の蛇行や雨量の増加により、沿岸の潮流や水質も大きく変化。
これにより産卵海域の変動や生育環境の悪化が起き、
浅場に浮かぶイカの光景自体が少なくなったと考えられます。
◆ 釣り人・海辺の観察者にとっての“気づき”
この光景は、
単なる死骸ではなく「季節の訪れと命のサイクル」を感じるサインです。
・港でモンゴウイカが浮いていたら「産卵が始まっている証拠」
・アオリイカ釣りの本格シーズンの到来も近い
・生態系の変化や釣果予測にもつながる
◆ まとめ|“浮かぶイカ”は、かつての南紀の春を告げる風景だった
| 時期 | 現象 |
|---|---|
| 3月下旬〜5月 | 産卵のため接岸 → 産卵後に死亡 → 海に浮かぶ個体も |
| 現在 | 数は激減。見られると“レアな春の記憶”に |
かつてはよく見られた光景が、今では貴重な“自然のメッセージ”となりつつあります。
南紀の海を見守る中で、こうした小さなサインも見逃さずに感じ取りたいですね。


