容姿の違いは体型とゼイゴにあり
私たちが普段「アジ」と呼んでいるのはマアジのことです。
マアジは体高があって少し平べったい、いかにも魚らしい美しい形をしています。
対するムロアジは、紡錘形と呼ばれる細長くて丸太のような筒状の体型をしています。
速く泳ぐために水の抵抗を極限まで減らした、まるでアスリートのような無駄のないフォルムです。
また、アジの仲間の特徴である「ゼイゴ(稜鱗)」と呼ばれるトゲトゲのウロコにも明確な違いがあります。
マアジはエラの後ろから尻尾までゼイゴがずっと続いています。
しかしムロアジは、体の後ろ半分の直線部分にしかゼイゴがありません。
さらにムロアジには、背びれと尻びれの後ろに「小離鰭(しょうりき)」という小さな独立したヒレが上下についているので一目でわかります。
磯に居着くマアジと外洋を駆けるムロアジ
生態系や住んでいる場所にも大きな違いがあります。
マアジは比較的浅い沿岸部を好み、海底の岩礁帯などに居着くタイプも多いです。
南紀の波止釣りや船のサビキ釣りで、一年を通して私たちを楽しませてくれる身近な存在です。
一方でムロアジは、黒潮などの暖かな海流に乗って外洋を回遊する回遊魚です。
群れを作ってかなりのスピードで広い海を泳ぎ回り、動物プランクトンなどを捕食しています。
そのためムロアジの身は、長距離を泳ぎ続けるための筋肉が発達し、血合いが非常に大きいのが特徴です。
食味と市場価値の決定的な差
市場価値という点では、圧倒的にマアジに軍配が上がります。
マアジは年間を通して味が安定しており、クセのない上品な脂と旨味で、高級魚としても扱われます。
対するムロアジは、鮮度が落ちるのが非常に早く、血合いが大きいため生臭さが出やすい魚です。
そのため、生の鮮魚としての市場価値はどうしても低くなってしまいます。
しかし、決して美味しくないわけではなく、旨味成分自体は非常に豊富に含んでいます。
獲れたての新鮮なムロアジのお刺身は、マアジとは違った野性味あふれる濃厚な味わいがあり、地元民や釣り人だけの特権です。
それぞれの魅力を引き出す最高の食べ方
マアジは何にしても美味しい万能な魚です。
お刺身、塩焼き、アジフライ、なめろうなど、どんな調理法でも食卓の主役を張れます。
一方でムロアジは、その豊富な旨味を活かした加工品で真価を発揮します。
伊豆諸島の特産品である「くさや」の原料として使われるのが代表的です。
また、干物や「むろ節」と呼ばれる鰹節の代用品に加工されることで、最高級の出汁が取れるようになります。
ご家庭で食べる場合は、血合いのクセを和らげるために、生姜やネギなどの薬味をたっぷり効かせたタタキや、フライにするのがおすすめです。
南紀の海が育む2つのアジを味わおう
マアジとムロアジ、同じアジでもこれほどまでに違う個性を持っています。
スーパーの鮮魚コーナーや釣果の中で見かけたら、ぜひその形やゼイゴの違いを観察してみてください。
それぞれの魚の長所を知って調理すれば、南紀の海の恵みをさらに美味しくいただくことができます。
他にもさばき方を知りたい魚や、釣りの仕掛けについて気になることはございますでしょうか。

