「グサッ」。
その瞬間、頭が真っ白になる。
魚を釣るはずの針が、自分の指や腕、あるいは友人の体に深く突き刺さってしまう。
釣り人を長くやっていれば、一度は遭遇する、あるいは目撃する悪夢のようなトラブルです。
今、まさに針が刺さった状態でこの記事を読んでいるなら、まずは深呼吸してください。
そして、絶対に**「反射的に無理やり引き抜こうとしない」**でください。
釣り針には「カエシ(バーブ)」がついています。
これが肉に食い込んでいる状態で引けば、傷口を広げ、神経や血管を傷つけ、地獄のような痛みを味わうことになります。
ここでは、現場でできる正しい対処法と、病院へ行くべき判断基準を解説します。
まず確認!「病院へ直行すべき」ケース
自力で抜こうとせず、道具をそのままにして(長い糸は切って)、すぐに病院へ行くべきなのは以下のケースです。
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目や顔、首周辺に刺さった場合 これは絶対です。 神経や重要な血管が集まっています。 絶対に触らず、救急車を呼ぶか、眼科・形成外科へ急いでください。
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深く刺さりすぎている場合 骨に達している感覚がある、あるいは太い血管の近くである場合。
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錆びた針が刺さった場合 破傷風のリスクが高まります。 抜けたとしても、必ず病院でワクチン等の処置を受けてください。
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本人がパニックを起こしている場合 無理は禁物です。 病院で麻酔をして抜いてもらうのが一番安全で、痛みもありません。 (基本的には皮膚科、外科、整形外科が対応してくれます)
現場で抜く場合の対処法(自己責任となります)
刺さった場所が指や腕の肉の厚い部分で、カエシが浅い場合のみ、以下の方法が試せます。
方法1:貫通法(カエシまで貫通させる)
これが最も確実で、傷口を広げない方法です。
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針の先端(カエシ部分)を、そのまま皮膚の表に出てくるまで押し進めます。 (痛いですが、戻すよりマシです)
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皮膚から飛び出した針先(カエシを含む)を、強力なニッパー(ペンチ)でパチンと切断します。
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カエシさえなくなれば、針はスルリと元来た道から抜けます。
※このためにも、釣り場には**「針を切断できる強力なプライヤー」**が必須なのです。
方法2:ストリング・ヤンク法(ひもで引く)
海外の漁師などがよくやる方法ですが、コツと勇気がいります。
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太めのPEラインなどを輪っかにし、針の曲がった部分(フトコロ)に引っかけます。
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針のチモト(糸を結ぶ方)を指で下方向(刺さった皮膚の方)へ強く押し付けます。 (これでカエシを肉から浮かせます)
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その状態を保ったまま、輪っかにした糸を、針が刺さった方向と「逆方向」へ一気に強く引きます。 躊躇すると激痛が走るだけで抜けません。 一瞬のスピードが命です。
抜いた後のケアが一番大事
無事に針が抜けたら、それで終わりではありません。
海の中には雑菌がうじゃうじゃいます。
ましてや魚のエサや粘膜がついた針は、細菌の塊のようなものです。
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血を絞り出す 傷口から少し血を絞り出し、中の菌を外に出します。
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真水で洗浄・消毒 水道水やペットボトルの水でよく洗い、マキロンやイソジンなどで消毒します。
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病院へ 今は大丈夫でも、数日後に化膿したり、破傷風になる可能性があります。 念のため、帰りに病院を受診することを強く推奨します。
「カエシ」を潰しておくという選択
管理釣り場や、リリース前提の釣りなら、最初からペンチでカエシを潰して「バーブレス」にしておくのも賢い選択です。
魚へのダメージも減りますし、万が一自分に刺さった時も、スッと抜けます。
安全は、釣果よりも優先されるべきものです。
もしもの時のために、釣太郎では強力なプライヤーや救急セットも置いておいてください。
何事もなく家に帰るまでが、釣りです。

