釣りを始めてから、スーパーの鮮魚コーナーでときめかなくなった。
あるいは、居酒屋で刺身を食べても「うーん、なんか違う」と感じてしまう。
これ、釣り人あるあるですよね。
家族からは「舌が肥えただけでしょ」なんて贅沢病扱いされるかもしれません。
でも、声を大にして言いたい。
それは決して気のせいでも、高慢ちきなわけでもないんです。
釣り人が持ち帰る魚と、流通に乗ってくる魚。
この二つは、生物学的に見ても「全く別の食べ物」と言っていいほど状態が違います。
なぜそこまで味が変わるのか。
今回はその科学的な理由を、専門用語を使わずに解き明かします。
1. 「網」は魚にとって満員電車の地獄
スーパーに並ぶ魚のほとんどは、網で一気に捕る「網漁」の魚です。
効率よく大量に捕るためには仕方がないことですが、魚にとってはたまりません。
網の中に追い込まれ、何トンもの魚同士がギュウギュウに押し潰される。
人間で言えば、超満員の通勤電車でプレスされ続けるようなものです。
この時、魚は猛烈なストレスを感じて暴れ回ります。
すると、筋肉中に「乳酸」という物質が一気に溜まるんです。
また、エネルギー物質(ATP)を使い果たしてしまいます。
これが旨味を減らし、身の味を「酸っぱく」「水っぽく」してしまう最大の原因。
対して、私たちが楽しむ「一本釣り」はどうでしょう。
一匹ずつ、丁寧にやり取りをして上げますよね。
魚体に無駄な圧力がかからず、魚もそこまで極限のストレスを感じる前に釣り上げられます。
この「身の無傷さ」が、食感のプリプリ感に直結するんです。
2. 「血」が回っているか、抜けているか
魚の生臭さ。
あの正体の9割は「血液」です。
網漁の場合、網の中で窒息死したり、暴れて傷ついたりして、体内に血が残ったまま死んでしまう魚が多いのが現実。
これを「野締め(のじめ)」と言います。
血が全身に回ったまま時間が経てば、当然、臭みが出ますし、腐敗も早くなります。
一方で釣り人は、釣った直後にナイフを入れますよね。
エラを切って、海水でフリフリして血を抜く。
さらに神経締めまでして、死後硬直を遅らせる。
この「血抜き」という工程があるだけで、魚は全く臭みのない、透き通った味になります。
スーパーのパックを開けた時に感じるあの独特の匂いが、釣りたての魚には全くないのはこのためです。
3. 温度管理のレベルが違う
流通の魚は、市場で競りにかけられ、トラックで運ばれ、店に並ぶまでに何度も温度変化にさらされます。
氷が溶けて真水に浸かってしまうと、浸透圧で魚の旨味が逃げ、代わりに水っぽくなってしまうことも。
でも私たちは、釣った瞬間から「海水氷(または潮氷)」にドボン。
塩分濃度を保ったまま、芯までキンキンに冷やして持ち帰ります。
この「冷やし込み」のスピードと徹底ぶりが、鮮度維持の決定打です。
まとめ:その魚は「プライスレス」な贅沢品
スーパーの魚が悪いわけではありません。
安く大量に食卓に届けるためには、あの方法しかないからです。
でも、品質という一点においては、釣り人の獲物には絶対に勝てません。
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ストレスを与えず
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血を一滴も残さず
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最高の温度管理で持ち帰る
これは、何万円も払う高級料亭でしか許されない品質管理です。
それを家庭で当たり前のように食べているのですから、スーパーの魚が美味しくなく感じるのは当然の反応なんです。
「俺の釣った魚は世界一うまい」
そう胸を張って、今夜も最高の晩酌を楽しんでください。

