冬の南紀で、
今や一種のブランド魚となった寒尺アジ。
30cmを超える体高。
指に吸い付くような脂。
「アジ=安い魚」という常識を壊す味。
南紀では堤防から狙えることもあり、
寒尺アジシーズンになると、
県内外から多くの釣り人が集まります。
しかし、
ここで多くの人が感じる疑問があります。
「周りはアジが釣れているのに、
なぜ自分には尺が来ないのか」
その答えが、
寒尺アジは群れの中の“数%”しかいない
という事実です。
この記事では、
なぜそんなに少ないのか。
なぜ簡単に再現できないのか。
南紀ならではの視点で解説します。
寒尺アジは「別の魚」ではない
まず誤解されやすい点から。
寒尺アジは、
特別な種類のアジではありません。
同じマアジ。
同じ群れ。
同じ海域。
それでも、
サイズも脂も
まるで別物になります。
この差を生むのが、
成長できた個体と、できなかった個体の差です。
理由① 成長スピードには個体差がある
アジは回遊魚ですが、
すべてが同じスピードで成長するわけではありません。
・捕食が上手い個体
・競争に強い個体
・危険回避能力が高い個体
こうしたアジだけが、
長い時間生き残り、
大きくなります。
結果として、
1つの群れの中に
20cm台が大多数
30cm超えは数%
という構図が生まれます。
理由② 寒尺アジは「回遊し続けない」
ここが南紀の重要ポイントです。
一般的なアジは、
回遊し続ける魚というイメージがあります。
しかし寒尺アジは、
条件の良い場所に一時的に溜まる
性質があります。
・水深
・潮のヨレ
・ベイトの質
・外敵の少なさ
これらが揃った場所に、
大型個体だけが居着く。
つまり、
同じ群れでも
大型だけ行動範囲が違う
ということです。
理由③ 南紀は「大型が残りやすい海」
南紀は、
・黒潮の影響
・冬でも水温が極端に下がらない
・ベイトが豊富
この条件が揃っています。
結果として、
アジが「途中で死なずに育つ」確率が高い。
全国的に見ても、
尺アジが生まれる可能性が高い海域
と言えます。
ただし、
可能性が高い=数が多い
ではありません。
理由④ 尺アジは警戒心が段違い
サイズが大きくなるほど、
アジの警戒心は一気に上がります。
・コマセの音
・仕掛けの不自然さ
・人の気配
これらを嫌い、
小型アジとは違う層を泳ぎます。
そのため、
群れは見えているのに
尺だけ釣れない
という現象が起きます。
理由⑤ 釣れる人が少ない=存在が少ない
寒尺アジは、
・タナ
・時間帯
・仕掛け
・誘い方
これらが噛み合った時だけ反応します。
つまり、
狙って釣れる人が少ない。
その結果、
「実在数以上にレア」に感じられる
という側面もあります。
「数%」だからこそ価値がある
もし、
寒尺アジが群れの半分を占めていたら。
ここまで話題にはならなかったでしょう。
・簡単に釣れない
・誰でも釣れるわけではない
・でも、確実に存在する
この絶妙なバランスが、
南紀の寒尺アジを
特別な存在にしています。
釣れない日は「魚がいない」のではない
重要なのはここです。
寒尺アジが釣れなかった日でも、
いなかったとは限らない。
・狙う層が違った
・時間がズレた
・仕掛けが合っていなかった
ただそれだけの可能性が高い。
数%の魚を狙うということは、
常に「ズレ」との勝負です。
要約
南紀の寒尺アジは大人気だが数は少ない。
同じ群れの中でも数%しか存在しない。
理由は成長差と生存競争。
大型だけ行動パターンが違う。
南紀は育つが、量産はされない海。
寒尺アジ釣りは、
数を釣る釣りではなく、
一匹を当てに行く釣りです。
だからこそ、
一匹の価値が桁違いになる。
それが、
南紀・寒尺アジ釣りが
多くの人を惹きつけてやまない理由です。

