冬から春にかけて脂が乗り、強烈な引きで釣り人を楽しませてくれるサワラ。
しかし、この魚を扱う際には細心の注意が必要です。 写真をご覧ください。
まるでナイフが並んでいるかのような、鋭利な歯。
指などが少し触れただけでも、スパッと切れてしまうほどの切れ味を持っています。
なぜサワラはこれほど危険な歯を持っているのか?
そして、なぜ魚には鋭い歯を持つものと、そうでないものがいるのか?
今回は、魚の「歯」に隠された進化と生態の不思議に迫ります。
まるでハサミ!サワラの歯が鋭い理由
サワラの歯は、単に獲物を噛むためのものではありません。
その形状は三角形に近く、前後が薄く尖っており、まさに「肉を切るためのナイフ」の構造をしています。
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獲物を「切断」して弱らせる サワラは、イワシなどの小魚の群れに高速で突っ込み、その鋭い歯で獲物の体を切り裂きます。 噛み付いて捕まえるだけでなく、傷を負わせて弱らせてから捕食するという、非常に攻撃的なハンティングスタイルを持っています。
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ハリス切れの常習犯 釣り人が「サワラカッター」と呼んで恐れるラインブレイク(糸切れ)。 これはサワラが餌を捕食する際、勢い余ってリーダー(釣り糸)に歯が触れてしまうことで起こります。 この鋭さは、フロロカーボンやナイロンの糸など、一瞬で切断してしまう威力があります。
魚の歯は「食べるもの」に合わせて進化した
魚の世界では、「歯の形」を見れば「普段何を食べているか」が分かると言われています。
これを「機能形態学」と呼びますが、大きく分けて3つのタイプに分類できます。
1. 肉食・魚食タイプ(鋭い歯)
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代表魚: サワラ、タチウオ、ヒラメ、サメなど
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特徴: 先端が鋭く尖っている、またはナイフ状になっている。 ヌルヌルと滑る魚を逃さないように突き刺したり、肉を切り裂いたりするのに適しています。 特にタチウオやサワラのような、自分と同じくらいの大きさの魚を襲うフィッシュイーターは、凶器のような歯を持っています。
2. 破砕・貝食タイプ(頑丈な歯・臼歯)
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代表魚: イシダイ、マダイ、クロダイなど
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特徴: 奥歯が臼(うす)のように平らで頑丈になっている。 これは、硬いカニの甲羅や貝殻、ウニなどをバリバリと噛み砕くために進化した形です。 鋭さよりも「噛む力(咬合力)」に特化しています。
3. 吸い込み・雑食タイプ(細かい歯・歯がない)
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代表魚: メジナ(グレ)、バス(ブラックバス)、コイなど
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特徴: ヤスリのような細かい歯がびっしり生えている、あるいは喉の奥に歯(咽頭歯)があるタイプ。 獲物を丸呑みしたり、水と一緒に吸い込んで捕食する魚たちです。 獲物を切り裂く必要がないため、口元の歯は獲物を逃さないための「滑り止め」程度の役割しか果たさない場合が多いです。
釣り人が気をつけるべきこと
サワラのような鋭い歯を持つ魚を釣った時、絶対にやってはいけないことがあります。
それは「素手で針を外そうとすること」です。
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バス持ち厳禁 ブラックバスのように親指を口に入れる持ち方(バス持ち)は、サワラやタチウオでは指を失う危険性があります。 絶対にやめましょう。
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プライヤーとフィッシュグリップは必須 針を外す際は必ずロングノーズプライヤー(柄の長いペンチ)を使い、魚体はフィッシュグリップで固定してください。 暴れた拍子に歯が当たるだけで大怪我に繋がります。
まとめ
サワラの鋭い歯は、高速で泳ぐ魚を効率よく仕留めるために進化した、究極のハンティングツールでした。
魚の歯を観察することは、その魚が普段どんな餌を好み、どうやって生きているかを知るヒントになります。
次回の釣行では、釣り上げた魚の口元を(安全に配慮しながら)じっくり観察してみてはいかがでしょうか。
その魚の生態が見えてくれば、釣りの攻略法もまた変わってくるはずです。

