「今日はマグロを食べよう!」と思ってスーパーや寿司屋に行くと、鮮やかな赤色のマグロと、
淡いピンク色(ほぼ白)のビンチョウマグロが並んでいます。
どちらも同じ「マグロ属」の魚ですが、見た目は全くの別物です。
実は、この色の違いは単なる種類の違いではなく、**「海の中での泳ぎ方」や「酸素の使い方」
という、生きるためのエンジンの違いによるものなのです。
なぜビンチョウマグロは白いのか?その謎を解き明かします。
1. 赤さの正体は「ミオグロビン」
まず、マグロの赤身がなぜ赤いのかを知る必要があります。
あの赤色は、血液の色ではなく、筋肉の中に含まれる**「ミオグロビン」**というタンパク質の色素です。
ミオグロビンは、取り込んだ酸素を筋肉内に貯蔵する「酸素タンク」の役割を果たしています。
常に高速で泳ぎ続け、深い海にも潜るマグロは、大量の酸素を筋肉にストックしておく必要が
あるため、このミオグロビン(赤色)が大量に含まれているのです。
2. ビンチョウマグロが「白い」理由
では、なぜビンチョウマグロは白い(色が薄い)のでしょうか?
結論から言うと、**「本マグロなどに比べて、筋肉中のミオグロビンの量が圧倒的に少ないから」**です。
理由は主に2つあります。
① 体のサイズと酸素消費量
本マグロ(クロマグロ)は最大で300kg〜400kgを超えますが、ビンチョウマグロは大きくても
数十kg程度の中型種です。
巨体を維持し、高速で泳ぎ続ける本マグロに比べると、小柄なビンチョウマグロは、筋肉に蓄えて
おくべき酸素の量がそこまで多くなくて済むのです。
② 運動量の質が違う
本マグロが「長距離マラソンランナー」だとすれば、ビンチョウマグロはもう少しライトな
「ジョギングランナー」のようなものです。
もちろん彼らも回遊魚なので泳ぎ続けますが、本マグロほど極限の持久力を必要としない生態である
ため、酸素タンクであるミオグロビンが少なく、結果として身の色がピンク色(白っぽい色)になっているのです。
3. 「白い」からこその美味しさがある
色が薄いことは、決して味が劣るということではありません。
むしろ、ミオグロビンが少ないことによるメリットがあります。
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酸味や鉄分(血の味)が少ない: 真っ赤なマグロ特有の「鉄っぽい酸味」が苦手な人でも、ビンチョウマグロなら食べられることが多いです。
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脂の甘みを感じやすい: 身の味が淡白であるため、脂(トロ)の甘みがダイレクトに感じられます。 これが「ビントロ」が子供や女性に大人気である理由です。
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加熱しても硬くなりにくい: ツナ缶(シーチキン)の原料として最高級とされるのは、この柔らかい身質のおかげです。
4. 南紀では「トンボ」と呼ばれ愛される魚
ここ和歌山・南紀エリアでは、ビンチョウマグロのことを、長い胸ビレがトンボの羽に見える
ことから**「トンボ」**と呼びます。
冬から春にかけて、ジギング船で狙う「トンジギ(トンボジギング)」は、釣り人に大人気の釣りものです。
スーパーで買う冷凍モノとは違い、釣りたての「生トンボ」のモチモチとした食感は、
一度食べたら忘れられない極上の味わいです。
まとめ
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マグロの赤さは、酸素を貯める「ミオグロビン」という色素の色。
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ビンチョウマグロは体が小さく、本マグロほど酸素を必要としないため、ミオグロビンが少なく白い。
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色が薄い分、クセや臭みがなく、脂の甘みが際立つのが特徴。
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南紀では「トンボ」と呼ばれ、ジギングの好ターゲットになっている。

