お正月が近づくと、玄関や神棚に飾られる「正月飾り」。
しめ縄や鏡餅をよく見ると、昆布やスルメ、時には立派なエビなどが飾られていることに気づきます。
実はこれらの海産物には、一つ一つ深い意味と願いが込められているのです。
また、日本は海に囲まれた島国であるため、地方によって飾られる魚やスタイルが大きく異なります。
今回は、正月飾りに海産物が使われる理由と、東日本と西日本で異なる「年取り魚」の文化について詳しく解説します。
見出し1:正月飾りに「海産物」が使われる3つの理由
そもそも、なぜ陸の飾り物に海の幸を使うのでしょうか。
そこには日本人特有の「言霊(ことだま)」と「神様への供物」という考え方があります。
1. 神様へのお供え物(神饌)
正月にお迎えする「年神様(としがみさま)」は、豊作や家内安全をもたらす神様です。
海、山、野の幸をバランスよく供えることで、自然の恵みに感謝し、新しい年の豊穣を祈る意味があります。
2. 語呂合わせ(縁起担ぎ)
日本人は古くから言葉遊びで縁起を担いできました。
「昆布(よろこぶ)」「鯛(めでたい)」などが代表的です。 言葉の響きが良いものを飾ることで、その年に幸運を呼び込もうとしたのです。
3. 保存性と栄養
スルメや昆布などの乾物は、保存が効きます。
「幸せが長く続く(保存性が高い)」という意味に加え、冬場の貴重なタンパク質や
ミネラル源としても重宝されていました。
見出し2:鏡餅やしめ縄に欠かせない!代表的な海産物の意味
ここでは、全国的に広く使われている代表的な飾り物について解説します。
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昆布(コンブ) 「喜ぶ(よろこぶ)」に通じる、最もポピュラーな縁起物です。 また、「子生(こぶ)」という字を当てて、子孫繁栄を願う意味もあります。 鏡餅の下に敷いたり、しめ縄に垂らしたりして飾ります。
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スルメ(イカ) 日持ちが良いことから「末永く幸せが続く」という意味があります。 また、かつてお金のことを「お足」と呼んだことから、足が多いイカは「お金に困らない」という金運上昇の願いも込められています。 地域によっては「寿留女」という字を当て、結納品などにも使われます。
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伊勢海老(イセエビ) 長い髭と曲がった腰が「腰が曲がるまで長生きできるように」という長寿の象徴です。 また、脱皮を繰り返して成長することから「立身出世」や「再生」のシンボルでもあります。 主に豪華な鏡餅の飾りとして用いられます。
見出し3:【東日本 vs 西日本】地方で異なる「年取り魚」の文化
お正月の食卓や、神棚への供え物として使われる魚を「年取り魚(としとりざな)」と呼びます。
ここには明確な地域差が存在します。
東日本は「鮭(サケ)」
北海道から東北、関東地方にかけては、お正月に「鮭」を用いるのが一般的です。
特に「新巻鮭(あらまきざけ)」は、お歳暮や神様への供え物として欠かせません。
鮭は川で生まれ、海で育ち、また生まれた川へ戻ってくる習性があります。
このことから「災いを避けて戻ってくる」「出世して故郷に錦を飾る」という縁起の良い魚とされています。
また、赤い身の色が「邪気を払う」と考えられていた説もあります。
西日本は「鰤(ブリ)」
一方、北陸から関西、九州地方にかけては「ブリ」が主流です。
ブリは成長するにつれて名前が変わる(ツバス→ハマチ→メジロ→ブリなど)「出世魚」の代表格です。
「家主が出世しますように」「子供が偉くなりますように」という立身出世の願いが込められています。
脂が乗った寒ブリは栄養価も高く、西日本の正月には欠かせない存在です。
見出し4:ユニークな地方の正月飾りと風習
鮭とブリ以外にも、特定の地域で愛されている海産物の飾りがあります。
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睨み鯛(にらみだい)/近畿・中国・四国・九州の一部 尾頭付きの鯛を塩焼きにし、三が日の間は手をつけずに飾っておく風習です。 神様にお供えした後、「睨み箸」と言って食べる真似だけをし、実際に食べるのはお正月が明けてからです。 「めでたい」を長く保つという意味があります。
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掛けの魚(かけのうお)/全国各地の旧家など ブリや鮭を2匹1組にして、縄で吊るして軒先や神棚に飾る風習です。 これには「入り用(いりよう)」の魚という意味があり、いざという時の備えや、先祖への感謝を表しています。
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勝男武士(かつおぶし)/全国 鰹節はその名の通り「勝男武士」や「勝つ魚」に通じます。 尚武(武道を尊ぶ)の気風から、古くから武家社会を中心に縁起物として飾られてきました。
まとめ
お正月の飾りに使われる海産物には、単なる装飾以上の深い意味が込められています。
「喜ぶ(昆布)」 「末永く(スルメ)」 「長寿(海老)」 「出世(ブリ)」 「回帰(サケ)」
これらはすべて、厳しい自然の中で生きる先人たちが、海の恵みに託した切実な願いの表れです。
今年のお正月は、飾られている海産物に注目し、その意味を噛みしめながら
新年を迎えてみてはいかがでしょうか。

