そのアオリイカ、本当に刺し身で大丈夫?
アオリイカ釣りの醍醐味は、なんといってもその場で味わう透明な刺し身です。
しかし、現場では様々な「鮮度の見極め方」が噂されています。
「釣ったアオリイカが死んだけど、吸盤に指を当てて吸い付けば刺し身で食える」
これは、多くの釣り人が耳にしたことがある「吸盤テスト」です。 果たしてこの説は本当なのでしょうか。
この記事では、その真実と、安全な刺し身のための絶対的なルールを解説します。
結論:吸盤が吸い付くイカは「ほぼ」刺し身OK
結論から言うと、「死んだアオリイカの吸盤がまだ指に吸い付く」状態は、
刺し身で食べられる可能性が『非常に高い』です。
これは、イカが死んでからまだ時間がほとんど経過しておらず、神経や筋肉が活動している「超新鮮」な状態を示しています。
鮮度という点では、これ以上ないほどの極上コンディションと言えるでしょう。
なぜ死んでも吸盤が吸い付くのか
イカは高度な神経系を持っています。
絶命(脳が機能停止)した後も、体表の筋肉や神経はしばらくの間、外部からの刺激に反応することができます。
指を吸盤に近づけたときの刺激で、吸盤周りの筋肉が収縮し、吸い付く現象が起こるのです。
これは死後硬直が始まる前の、最も新鮮な状態の証拠です。
最重要:吸盤テストより「アニサキス対策」が優先
「吸盤が吸い付く=新鮮」は間違いありません。
しかし、イカの刺し身で私たちが本当に恐れるべきは、鮮度の低下ではなく**「アニサキス」**です。
アニサキスと鮮度の関係
アニサキス(寄生虫)は、イカの内臓(ワタ)に潜んでいます。
そして、イカが死ぬと、アニサキスは居心地の悪くなった内臓から、身(筋肉部分)へと移動を開始します。
ここで「吸盤テスト」が意味を持ちます。
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吸盤が吸い付く → 死んでから時間が経っていない。 → アニサキスがまだ内臓から身へ移動する時間がなかった可能性が「高い」。
つまり、「吸盤が吸い付く」ことは、アニサキスのリスクが「比較的低い」ことを示す間接的なサインにはなります。
「吸盤テスト」の落とし穴
しかし、これに頼るのは危険です。
イカの個体差や、死んだときの状況(例えば、非常に水温が高い状況)によっては、アニサキスが予想より早く移動を開始する可能性もゼロではありません。
「吸盤が吸い付くから大丈夫」と過信せず、安全のための「正しい処理」を行うことが絶対条件です。
刺し身で安全に食べるための絶対条件
アオリイカを刺し身で安全に、そして美味しく食べるためには、以下の処理を「釣った直後」に行うことが鉄則です。
1. 即「活け締め」する
イカはまず「締め」ます。 眉間や胴体にナイフを入れ、神経を破壊することで、色や鮮度を保ちます。
これにより、イカが暴れて身が傷つくのを防ぎます。
2.【最重要】すぐに「内臓」を抜く
アニサキス対策で最も重要な工程です。
アニサキスが身に移動する「前」に、その住処である内臓(ワタ)をすべて取り除きます。
胴体からワタをきれいに引き抜きましょう。 これで、アニサキスが身に移る物理的な経路を遮断できます。
3. 真水に当てず、しっかり冷やす
イカの身は真水(水道水など)に当てると水っぽくなり、味が落ちます。
海水で軽く洗うか、キッチンペーパーなどで汚れを拭き取ります。
その後、すぐに氷や保冷剤を入れたクーラーボックスで、しっかり冷やして持ち帰ります。
まとめ:吸盤テストは「答え合わせ」
アオリイカの「吸盤テスト」についてまとめます。
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吸盤が吸い付くのは「超新鮮」の証拠である(真実)。
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これは、アニサキスが身に移動しているリスクが「低い」ことを示す(間接的なサイン)。
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しかし、安全を100%保証するものではない。
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安全の確実な担保は「即締め、即ワタ抜き」でしか達成できない。
釣ったアオリイカが死んでしまっても、「即ワタ抜き」の処理さえしていれば、吸盤が吸い付かなくても刺し身で食べられます(鮮度は落ちていきますが)。
逆に、ワタを抜いていないイカは、たとえ吸盤が吸い付いたとしても、アニサキスのリスクはゼロとは言いきれません。
「吸盤テスト」は、自分の処理が完璧で、最高の鮮度を保てているかを確認するための「答え合わせ」として楽しむのが、最も賢い付き合い方と言えるでしょう。

