釣果の味を左右する「冷却速度」という真実
釣りの最大の楽しみの一つは、自分で釣った新鮮な魚を味わうことです。
しかし、「釣りたてのはずなのに、お店で食べるより美味しくない…」と感じたことはありませんか?
その原因は、魚の締め方や血抜きにあるかもしれません。
しかし、それと同じくらい、あるいはそれ以上に重要なのが**「クーラーボックス内での冷却速度」**です。
魚は死後、自己消化や細菌の繁殖によって急速に鮮度が落ちていきます。
この劣化をいかに早く止めるか(=いかに早く魚の深部体温を下げるか)が、味の分かれ道となります。
衝撃のデータ比較:「普通の氷」 vs 「海水氷」
ここで、非常に興味深いデータがあります。
釣った魚の中心温度を10℃から0℃まで下げる時間を比較した実験データです。
- 普通の氷(真水)の場合:およそ20分
- 海水氷(潮氷)の場合:およそ12分
このデータが示す通り、海水氷は普通の氷よりも約40%も速く魚を冷却できるのです。
この「8分の差」が、魚の死後硬直の質や、旨味成分(ATP)の分解速度に大きな影響を与え、
数時間後、あるいは翌日の食味に決定的な差を生み出します。
なぜ「海水氷」は圧倒的に速く冷やせるのか?
なぜ、これほどまでに冷却速度に差が出るのでしょうか。 それには2つの明確な理由があります。
1. 氷点(凍る温度)の違い
真水は0℃で凍りますが、海水(塩分濃度約3.5%)が凍り始める温度(氷点)は**約-1.8℃**です。
つまり、海水氷は「0℃以下の冷たい液体」として存在できます。
0℃の氷よりも、さらに低温の-1.8℃の液体で冷やすわけですから、冷却速度が速いのは当然です。
2. 熱伝導率(接触面積)の違い
こちらが最も重要な理由です。
- 普通の氷(板氷やロック氷) クーラーボックスに氷を敷き詰めても、魚の体表と氷の間には無数の「空気の隙間」ができます。空気は熱を伝えにくいため、魚は氷と接している「点」でしか冷えません。
- 海水氷(スラリー状の液体) 氷と海水がシャーベット状(スラリー状)になった海水氷は「液体」です。 液体は魚の体表の凹凸に完璧に密着し、魚体全体を包み込みます。 空気の隙間が一切なく、「面」全体で魚の熱を奪うため、熱交換率が桁違いに高くなります。
海水氷がもたらす「鮮度」以外のメリット
海水氷には、速さ以外にも大きなメリットがあります。
- 「氷焼け」を防ぐ 魚が0℃の固い氷に長時間直接触れていると、その部分だけが凍ってしまい、細胞が壊れて変色・乾燥する「氷焼け」を起こします。海水氷なら全体を均一に優しく冷やすため、これが起きません。
- 「浸透圧」で旨味を守る 魚を真水(普通の氷が溶けた水)に浸すと、浸透圧の差によって魚の細胞内に水が入り込み、身が水っぽくなってしまいます。同時に、旨味成分が水に溶け出してしまいます。 海水とほぼ同じ塩分濃度の海水氷であれば、浸透圧の差が少ないため、旨味の流出を最小限に抑えられます。
簡単!海水氷(潮氷)の作り方
作り方は非常に簡単です。
- クーラーボックスに、まず氷(板氷やロック氷)を入れます。
- そこに、釣り場の新鮮な海水を適量(氷が半分浸る程度)注ぎます。
- 氷が溶けてシャーベット状(スラリー状)になってきたら、血抜き・神経締めを終えた魚を投入します。
【注意点】
魚を直接海水氷に長時間漬け込みすぎると、塩辛くなりすぎたり、身がふやけたりする場合があります。
気になる方は、魚をビニール袋に入れてから海水氷に投入するか、クーラーボックスにスノコを
敷き、魚が水に浸りすぎないように調整することをおすすめします。
まとめ:最高の鮮度を求めるなら「海水氷」一択
釣った魚を最高の状態で持ち帰る秘訣は「冷却速度」にあります。
データが示すように、海水氷は普通の氷よりも圧倒的に速く、そしてムラなく魚を冷却することができます。
「普通の氷:20分」「海水氷:12分」——この差が、あなたの釣果の価値を決めます。
次の釣行から、ぜひ「海水氷(潮氷)」での管理を徹底してみてください。
その味の違いに驚くはずです。


