突き出した数本の鋭い歯。一度見たら忘れられない、なんともユニークな顔つきのこの魚は
「イラ」です。
その名前は、釣り上げると体をくねらせて暴れたり、歯ぎしりをしたりする様子が**
「イライラしている」**ように見えることから付いたと言われています。
しかし、この特徴的な歯は、ただの飾りではありません。
磯の硬い獲物をバリバリと砕くための、強力な「特殊工具」なのです。
この記事では、謎多き魚「イラ」の生態と、その見た目からは想像もつかない魅力について徹底解説します。
🦷 秘密①:万力のようなパワーを生む「出っ歯」
イラの最も目を引く特徴は、口から突き出た4本(上顎2本、下顎2本)の犬歯のような歯です。
- なぜこの形なのか? この歯は、人間でいうところのペンチや万力のような役割を果たします。イラの主な餌は、サザエ、アワビ、そして石鯛釣りの餌にもなるウニといった、非常に硬い殻を持つ生き物です。イラはこの鋭い歯を使い、硬い殻に一点集中で圧力をかけて食い込み、テコの原理でこじ開けたり、砕いたりします。
- 奥歯も強力! さらに、口の奥には**咽頭歯(いんとうし)**という臼状の頑丈な歯が備わっています。出っ歯で獲物を捕らえた後、この咽頭歯でバリバリと殻ごと噛み砕いて中身を食べるのです。釣り人が撒いたウニを、高級魚の石鯛よりも先に横取りしてしまう様は、まさに「磯の破壊者」と呼ぶにふさわしい光景です。
この強力な顎と歯は、他の魚が手を出せない硬い獲物を専門に狙う、イラ独自の生存戦略の証なのです。
🤔 秘密②:「イライラ」している名前の由来
イラというユニークな名前は、その行動に由来すると言われています。
- 釣り上げると大暴れ: イラは釣り上げられると、体を激しくくねらせて暴れます。
- 歯ぎしりをする: 興奮すると奥歯である咽頭歯をギリギリと擦り合わせ、人間が歯ぎしりをしているような音を出すことがあります。
これらの行動が、まるで人間が**「イライラして怒っている」**ように見えることから、
「イラ」という名前が付いたという説が有力です。
そのユニークな見た目と行動が、一度見たら忘れられない強烈なインパクトを与えます。
😋 秘密③:気になる食味は?見た目とのギャップ
「イラは美味しくない」「水っぽい」といった評価を聞くこともあり、釣り人からは
外道(げどう:本命以外の魚)として扱われることが多い魚です。
しかし、それは調理法と旬を知らないからこその評価かもしれません。
- 旬の時期: イラの旬は秋から冬にかけて。この時期のイラは脂が乗り、身質も向上します。
- 美味しい食べ方: イラの身は水分が多めで柔らかいのが特徴。そのため、以下のような調理法で真価を発揮します。
- 塩で締めて水分を抜く: 刺身で食べる場合は、強めに塩を振ってしばらく置き、余分な水分を抜くことで身が締まり、旨味が凝縮されます。
- 加熱調理: ムニエルやバター焼き、フライなど、油を使った料理との相性が抜群です。火を通すことで、ふっくらとした白身の美味しさを楽しめます。
- 練り物: 上質なすり身がとれるため、かまぼこやさつま揚げの原料としても非常に優秀です。
特に旬の時期の脂が乗ったイラは、高級魚の「アマダイ(甘鯛)」にも匹敵する味と評価する食通もいるほど。
見た目や俗説だけで判断せず、一度試してみる価値は十分にあります。
まとめ:イラは知れば知るほど面白い魚
- 特徴的な出っ歯は、ウニやサザエの硬い殻を砕くための特殊工具。
- 「イライラ」しているような行動からその名が付いた。
- 旬の時期に適切な調理をすれば、非常に美味しく食べられる隠れた逸品。
ここ和歌山県みなべ町周辺の磯でもよく見かけるイラ。
もし釣り上げて、そのユニークな歯を見ることがあれば、ぜひこの記事を思い出してください。
その背景にある力強い生態を知れば、単なる外道ではない、魅力あふれる魚として見方が
変わるかもしれません。


