「釣ったばかりの魚って、磯の香りはするけど生臭くないのはなぜだろう。 」
「スーパーで買った魚が、時々すごく臭いのはどうして? 」
そんな疑問を抱いたことはありませんか。
実は、釣りたての魚が無臭に近いのは、紛れもなく「生きているから」です。
そして、時間が経つにつれて不快な臭いが発生するのには、「酵素」「細菌」
「トリメチルアミン」という3つの黒幕が関わっています。
この記事では、魚の匂いのメカニズムと、鮮度を保つための秘訣を分かりやすく解説します。
釣りたての魚はなぜ無臭?生命活動が守る「新鮮の証」
釣り上げられたばかりの魚は、生臭さとは無縁です。
アユがスイカの香りがするように、魚にはそれぞれ特有の香りがありますが、それは決して不快なものではありません。
この無臭状態を保っているのが、魚の生命活動そのものです。
生きている魚の体内では、エネルギー源である**ATP(アデノシン三リン酸)**が豊富に存在します。
このATPが、臭いの原因となる物質の発生を強力に抑制しているのです。
つまり、「無臭=生きている証」と言えるでしょう。
時間が経つと魚が臭くなる3つの原因
魚が死んでしまうと、生命活動が停止し、ATPの供給もストップします。
すると、待ってましたとばかりに3つの現象が連鎖的に起こり、あの独特の生臭さが発生します。
原因①:自己消化酵素による分解
魚は死後、体内に持っている「酵素」の働きによって、自らのタンパク質や脂質を分解し始めます。 これを自己消化と呼びます。
自己消化自体は、熟成肉のように旨味成分(アミノ酸など)を増やす働きもしますが、同時に身を柔らかくし、後述する細菌が繁殖しやすい環境を作り出してしまいます。
原因②:細菌の繁殖と腐敗
魚の体表やエラ、内臓には、もともと多くの細菌が付着しています。
自己消化によって分解されたアミノ酸などは、これらの細菌にとって格好の栄養源です。
細菌はこれをエサにして爆発的に増殖し、アンモニアなどの不快な臭いを持つ物質を発生させます。 これが「腐敗」の始まりです。
原因③:生臭さの元凶「トリメチルアミン」の発生
魚の生臭さの主成分は、**トリメチルアミン(TMA)**という物質です。
実は、生きている海水魚の体内には、旨味成分の一つである**トリメチルアミンオキシド(TMAO)**という無臭の物質が含まれています。
魚が死んで鮮度が落ちると、細菌が持つ酵素の働きによってTMAOが分解(還元)され、悪臭を放つトリメチルアミン(TMA)に変化してしまうのです。
このトリメチルアミンの発生こそが、私たちが「魚臭い」と感じる最大の原因です。
【魚の匂い発生メカニズムまとめ】
- 死後:生命活動が停止し、ATPが減少する。
- 自己消化:酵素が働き、タンパク質などが分解される。
- 細菌の繁殖:分解物を栄養に細菌が増殖する。
- トリメチルアミン発生:細菌の酵素がトリメチルアミンオキシドを分解し、強烈な生臭さの元となるトリメチルアミンを生成する。
臭いを抑えて美味しさキープ!家庭でできる鮮度維持のコツ
この臭いの発生メカニズムを理解すれば、魚の鮮度を保つ方法も見えてきます。
ポイントは「酵素の働きを遅らせ」「細菌の活動を抑える」ことです。
- 釣った直後の「締め」と「血抜き」 釣った魚をすぐに締めて血抜きをすることは、ATPの消費を緩やかにし、細菌の栄養源となる血を取り除くために非常に重要です。 これにより、その後の劣化スピードを格段に遅らせることができます。
- 徹底した冷却 細菌の活動は温度に大きく左右されます。 魚を釣った直後や購入後、すぐに氷や氷水で急冷することで、細菌の増殖を劇的に抑えることができます。 特に内臓は傷みやすいので、お腹の中からもしっかり冷やすのが効果的です。
まとめ
釣りたての魚が無臭なのは、生命活動によって臭いの元が抑えられているからです。
死後、「自己消化酵素」「細菌の繁殖」「トリメチルアミンの発生」という3つのプロセスを経て、
時間とともにあの独特の生臭さが増していきます。
魚の匂いの正体を知り、正しい処理と保存を心がけることで、魚本来の美味しさを最大限に引き出すことができます。
ぜひ、新鮮な魚の本当の味を楽しんでみてください。


