日本を代表する高級食材「イセエビ(伊勢海老)」。
刺身、鬼殻焼き、味噌汁など、どの料理にしても絶品で、正月や祝い事にも欠かせない食材です。
しかし、マダイやブリ、クルマエビのように「養殖イセエビ」という言葉は聞きません。
なぜイセエビは養殖されていないのか?
実は研究は進んでおり、将来的な実用化も見据えた動きがあります。
なぜイセエビは養殖されていないのか?
イセエビの養殖が難しい理由は、大きく3つあります。
1. 幼生期が極端に長い
イセエビは孵化後、フィロソーマ幼生という透明な葉っぱ状の形態で海を漂います。
この期間が200〜300日以上と非常に長く、自然界でも成長できる個体はごくわずかです。
養殖環境では長期的な飼育・餌やり・水質維持が難題になります。
2. 餌や環境条件が複雑
フィロソーマ幼生は、特定のプランクトンや微小生物を食べますが、人工飼料への転換が難しいとされています。
さらに水温や光の条件も繊細で、わずかな変化で生存率が大きく低下します。
3. 成長スピードが遅い
マダイやブリは2〜3年で出荷可能ですが、イセエビは5〜7年かかると言われています。
養殖コストが高く、市場価格に見合わないという経済的な問題があります。
現在の研究状況
日本では、水産研究・教育機構や各地の水産試験場がイセエビの養殖研究を進めています。
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1990年代
人工孵化には成功したものの、フィロソーマ幼生期で大量死する問題が続く。 -
2000年代
海水組成・微生物環境の調整で、幼生の生存期間が延びる成果。 -
2010年代
人工的に幼生を「パルルバ幼生」へ変態させることに成功。
しかし生存率はまだ数%レベル。 -
2020年代
餌の種類や給餌頻度、タンクの形状、照明条件の最適化研究が進む。
一部の研究施設では、孵化から稚エビまで育成できる事例も出始めている。
実用化はいつ頃?
現状では、完全養殖の商業化はまだ先と考えられています。
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短期(5〜10年以内)
→ 研究施設や水族館レベルでの完全養殖成功例は増加 -
中期(20〜30年以内)
→ 限定的な試験販売が始まる可能性 -
長期(50年スパン)
→ 成長スピード改善・生存率向上により、商業ベースでの安定供給が可能に
もし養殖が実用化されたら?
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資源保護に貢献(天然イセエビの乱獲防止)
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年中安定供給が可能になり、価格も安定
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レストランや輸出市場への供給拡大
ただし、天然物特有の食味や風味を養殖で再現できるかは課題として残ります。
まとめ
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イセエビは幼生期の長さ・餌・環境条件の複雑さ・成長の遅さが養殖を難しくしている
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研究は着実に進展しており、稚エビまで育成できる事例も出始めている
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商業化には数十年単位の時間がかかる可能性が高い
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実用化すれば資源保護や安定供給に大きく貢献


