アジは、日本の食卓にとって馴染み深く、釣り人にとっても人気の魚種です。
しかし近年、アジの漁獲量が減少していると感じている方も多いのではないでしょうか。
本稿では、過去40年間のアジの漁獲量の推移を分析し、その減少の理由を明らかにします。
特に、和歌山県の釣り人の皆さんに現状を理解していただくため、地域ごとのデータにも焦点を当て、分かりやすく解説します。
本稿が、アジ資源の現状と未来について考える一助となれば幸いです。
過去40年のアジ漁獲量:全国的な傾向と和歌山県の現状
全国の漁獲量推移
全国的に見ると、アジの漁獲量は過去40年で大きく変動しています。
平成初期(1989年~)には、年間30万トンほどの水揚げがありましたが、近年では10万トン台で推移しています 。
特に2019年には、9万7千トンまで落ち込み、これは過去40年間で最も低い水準となりました 。
昭和40年(1965年)には53万トンというピークを迎えたマアジの漁獲量は、昭和55年(1980年)には5万4千トンにまで減少しました。
その後、平成8年(1996年)には33万トンまで回復しましたが、平成11年(1999年)には21万1千トンに再び減少、平成17年(2005年)には19万4千トンとなっています 。
別のデータでは、1984年には1282万トンあった日本の総漁獲量が、2019年には420万トンと、
ピーク時の約3分の1にまで減少しており、アジの減少もこの大きな流れの一部と言えます 。
2019年の全国のアジの漁獲量は、1980年以来の低水準であったことが複数の情報源から示されています.
和歌山県における詳細な漁獲量データ
和歌山県におけるアジの漁獲量の推移を見ると、全国的な傾向とは異なる動きも見られます。
紀伊水道におけるマアジの漁獲量は、1970年代後半から1985年までは低い水準でしたが、1986年10~11月に卓越した世代群(1986年級群)がまとまって漁獲された後、増加に転じました.
翌1987年からは、1~2年おきに発生した比較的資源量の高い世代群を中心に資源量が増加し、特に1994年以降は夏季に2歳魚の大量来遊により一気に水準が上がりました.
しかし、過去10年間の和歌山県におけるマルアジ(瀬戸内海東部系群)の水揚げ量は、3,789~11,282トンと年ごとの変動が大きく、1999年からは減少傾向が続いています.
田辺市の漁業協同組合のデータを見ると、アジは主要な魚種の一つとして挙げられていますが、具体的な年ごとのアジの漁獲量は記載されていません。
しかし、全体の漁獲量を見ると、昭和48年(1973年)の12,727トンをピークに、その後は増減を繰り返しながらも減少傾向にあることが分かります.
和歌山県の総漁獲量の推移を示す図では、昭和40年代から平成にかけての変動が見られますが、具体的なアジの漁獲量を示すものではありません.
1986年1~12月の中型まき網漁業の漁獲成績報告書によると、マアジとマルアジの漁獲量が示されており、1978~1985年の平均と比較することができます.
太平洋のマアジ資源に関する詳細な評価によると、1982~1985年の漁獲量は2万トン以下でしたが、1986年には3.7万トンに急増し、1990年以降に再び増加して1993~1997年には7万~8万トンと高い水準で推移しました。
しかし、1997年以降は減少に転じ、2009年以降は3万トン以下で推移しており、2019~2021年の漁獲量は1.5万~1.6万トン程度となっています.
2022年の全国の都道府県別アジ類漁獲量ランキングでは、和歌山県は12位で1,957トンでした 。これは、2012年の全国のアジ類漁獲量と比較して27%の減少となっています 。
みなべ町におけるアジの漁獲量は、他の魚種と合わせて年間2,000トン~5,000トンで変動していますが、アジ単独の具体的な数値は示されていません.
2022年の和歌山県の水産業の概要によると、アジ類の漁獲量は1,956トンとなっています 。
| 年 | 和歌山県 アジ類 漁獲量 (トン) | 出典 |
|---|---|---|
| 1978-1985 (平均) | 不明 | |
| 1986 | マアジ:723.8, マルアジ:3733.3 | |
| 1993-1997 (ピーク) | 全国太平洋系群: 7万~8万 | (和歌山県を含む) |
| 1999 | マルアジ: 減少傾向開始 | |
| 2009 以降 | 全国太平洋系群: 3万トン以下 | (和歌山県を含む) |
| 2013-2023 (過去10年) | マルアジ: 3,789~11,282 (変動大) | |
| 2019-2021 | 全国太平洋系群: 1.5万~1.6万 | (和歌山県を含む) |
| 2022 | 1,956 | |
| 2022 | 1,957 | |
| みなべ町: 2,000~5,000 (全魚種) |
なぜアジは減ったのか?
アジの漁獲量が減少している背景には、いくつかの要因が複合的に影響していると考えられます。
資源量の変動:親魚の減少、産卵数の変化など、生物学的な要因
太平洋のマアジの資源量は、1980年代から増加傾向となり、1990年代半ばには14万トンから16万トンで推移しましたが、1997年から減少傾向に転じました 。
2006年以降は10万トンを下回り、2009年には5.6万トンまで減少しています 。近年5年間(2016~2020年)の親魚量の推移を見ると、減少傾向にあると判断されています 。
2020年の資源量は3.3万トン、親魚量は1.7万トンで、MSY(最大持続生産量)を実現する親魚量の水準(6万トン)を下回っています 。
再生産成功率も、2012年以降は低い水準で推移しており、生まれた稚魚が順調に育っていない可能性が示唆されています 。
漁獲圧の影響:過剰な漁獲が資源に与える影響
太平洋のマアジに対する漁獲圧は、2012年を除いてFmsy(MSYを実現する漁獲圧の水準)を上回る値で推移しており、親魚量は1991~1992年を除いてSBmsy(MSYを実現する親魚量の水準)を下回る値で推移しています 。
2020年の漁獲圧はMSYを実現する漁獲圧の水準を上回っています 。
これは、持続可能な漁獲量を超えてアジが獲られている可能性を示唆しており、資源の回復を遅らせる要因となります。
海洋環境の変化:水温上昇、海流の変化などがアジの生息に与える影響
日本の総漁獲量が減少している原因の一つとして、海水温の上昇や海流の変化などの環境の変化が指摘されています 。
アジの生息に適した水温や環境が変化することで、分布域が変わったり、成長や産卵に影響が出たりする可能性があります。
加入量の変動:生まれた稚魚が成長し、漁獲対象となるまでの過程における問題
太平洋のマアジの加入量(0歳魚の数)は、1993年に24億尾と最大になりましたが、その後は減少傾向にあり、2021年には4.0億尾となっています 。
これは、生まれた稚魚の数が減っているか、成長する過程で死亡する数が増えていることを示唆しています。
特定の漁法や漁具の影響
和歌山県では、マルアジは主にまき網で漁獲されており、その水揚げ量は1999年から減少傾向が続いています 。
紀伊水道周辺海域では、中型まき網によるマルアジの漁獲量が最も多く、かつては増加傾向にありましたが、2000年頃から再び減少傾向となっています 。
釣り人の皆さんへ:どれだけ漁獲量が減っているのか、具体的な数字で説明
過去の漁獲量のピーク時と比較すると、アジの漁獲量がどれほど減少しているかが分かります。
全国的には、平成初期には30万トンほど獲れていたアジが、近年では10万トン前後、特に2019年には10万トンを大きく下回る9万7千トンまで減少しました 。
これは、ピーク時から約7割もの減少です。
和歌山県では、太平洋のマアジは1990年代半ばには7万トンから8万トンもの漁獲量がありましたが 、2019年から2021年の漁獲量は1.5万トンから1.6万トン程度にまで減少しています 。
これは、ピーク時から8割以上も減少している計算になります。
このように、アジの漁獲量は全国的にも、そして和歌山県においても大幅に減少しており、釣り人の皆さんがアジを釣る機会が減っていることを示唆しています。
また、以前はたくさん獲れた場所でも、近年ではほとんど獲れなくなっているという声も聞かれるかもしれません。
今後の見通しと、釣り人ができること
太平洋のマアジの資源評価によると、2020年の資源量と親魚量はMSYを実現する水準を下回っており、親魚量の動向も減少傾向にあります 。
2022年の親魚量と資源量の予測値に基づき算出されたABC(漁獲可能量)は0.4万トンと非常に低い水準です 。
2023年の親魚量と資源量の予測値、そしてABCは1.8万トンと予測されていますが、依然として低い水準です 。
これは、今後もアジの漁獲量がすぐに回復するとは限らない厳しい状況を示しています。
このような状況の中で、釣り人の皆さんにできることは、まず第一に、漁獲規制やルールをしっかりと守ることです。
また、資源状況に関する情報を積極的に収集し、関係機関の取り組みに協力することも重要です。
例えば、釣獲したアジのサイズや数を記録し、研究機関に提供することなども、資源管理に役立つ可能性があります。
アジ資源の回復には、漁業者だけでなく、釣り人一人ひとりの協力が不可欠です。
未来の世代も豊かな海でアジ釣りが楽しめるよう、今できることを考え、行動していくことが求められています。
まとめ
過去40年間で、アジの漁獲量は全国的に大きく減少し、和歌山県においても同様の傾向が見られます。
その背景には、親魚の減少や産卵数の変化といった生物学的な要因、過剰な漁獲による漁獲圧の影響、海洋環境の変化、そして加入量の変動などが考えられます。
釣り人の皆さんは、かつてに比べてアジを釣る機会が減っている現状を認識し、今後のアジ資源の回復に向けて、漁獲規制の遵守や情報提供など、できることから協力していくことが大切です。
アジ資源の持続的な利用のため、皆で力を合わせて取り組んでいきましょう。


