猟師の「生臭さの原因は血が腐るから。血抜きさえすれば生臭さはない」という考え方は、
魚にも大部分が当てはまりますが、完全に同じとは言えません。
魚特有の生臭さには、血液だけでなく筋肉や皮膚、脂肪、内臓が関与する要因もあるためです。
以下で詳しく解説します。
1. 血抜きが生臭さを抑える理由
魚も動物と同様、血液が生臭さの主要な原因の一つです。魚を釣り上げた後、すぐに血抜きを
行わないと、血液が体内にとどまり、以下のような問題が発生します:
(1) 血液の腐敗
- 血液が酸化・腐敗すると、アンモニアや硫黄化合物が発生し、生臭い匂いを強くします。
- 特に魚の血液には鉄分が含まれており、酸化すると金属臭や独特の臭みを放つようになります。
(2) 細菌の増殖
- 血液は栄養が豊富なため、死後すぐに細菌が増殖しやすいです。
- 細菌が生成する酵素が魚のタンパク質や脂肪を分解し、生臭さを強めます。
(3) 腐敗が全体に広がる
- 血抜きをしていないと、腐敗が血液から筋肉や脂肪に広がり、魚全体の臭いが悪化します。
2. 血抜きだけでは臭みを完全に消せない理由(魚特有の要因)
魚には、動物と異なる生臭さの要因がいくつかあります。
(1) トリメチルアミン (TMA)
- 海水魚の筋肉には、浸透圧を調整するための「トリメチルアミンオキシド (TMAO)」が含まれています。
- 魚が死ぬと、このTMAOが細菌や酵素によって分解され、「トリメチルアミン (TMA)」という生臭い物質になります。
- 血抜きではTMAの発生を防げないため、生臭さが残る場合があります。
(2) 内臓の影響
- 特に泥底や腐敗した餌を食べる魚(ボラ、チヌなど)は、内臓に泥臭さや腐敗臭がたまりやすいです。
- 血抜きだけでなく、早めに内臓を取り除くことが生臭さ軽減に重要です。
(3) 脂肪の酸化
- 青魚(サバ、イワシなど)の脂肪は酸化しやすく、これが独特の生臭さ(酸敗臭)を引き起こします。
- 血抜きだけでは脂肪酸化由来の臭みを防げません。
(4) 表皮の粘液
- 魚の表皮には粘液が分泌されており、これが海藻や環境の匂いを吸着します。
- 血抜きだけでは表皮の匂いを取り除けないため、洗浄が必要です。
3. 魚における血抜きの重要性
とはいえ、血抜きを徹底することは魚の臭みを大幅に軽減する上で非常に重要です。特に次のポイントを抑えると効果的です:
(1) 活け締め
- 魚を釣り上げたら、すぐに活け締めを行い、動脈を切って血液を抜きます。
- 活け締め後、海水または氷水でしっかり血を流すと効果的です。
(2) 血合い肉の処理
- 血合い部分(骨と身の間にある赤い肉)は血液が多く含まれるため、調理前にしっかり取り除くことで臭みを抑えられます。
4. 血抜き以外の臭み対策
血抜きだけでは防げない臭みについては、以下の対策を併用すると効果的です:
(1) 内臓の早期除去
- 腐敗の早い内臓を取り除き、流水で綺麗に洗うことで臭いの発生を防ぎます。
(2) 表面の洗浄
- 表皮の粘液を流水で洗い流す。塩や酢を使うとさらに効果的です。
(3) 酢・酒・生姜の利用
- 酢や酒、生姜などの調味料を使うことで臭い成分を中和またはマスキングします。
(4) 冷却保存
- 魚は死後も細菌や酵素が働くため、早めに氷水や冷蔵庫で保存することが重要です。
5. 動物と魚の違い:臭みの原因
- 動物: 臭みの多くは血液と脂肪が腐敗することで発生します。血抜きを徹底すれば臭みを大幅に軽減可能。
- 魚: 血液だけでなく、内臓、脂肪、筋肉内のTMAなども臭みの原因となります。そのため、血抜きに加えて内臓処理や適切な保存方法が必要です。
6. まとめ
猟師の「血抜きさえすれば生臭さはない」という考え方は、魚でも血抜きが生臭さ軽減の重要な
ポイントである点では正しいです。
しかし、魚の場合はそれだけでは完全に臭みを除去することは難しく、内臓処理、脂肪酸化対策、
TMAの発生抑制が必要です。
適切な血抜きと併せて、下処理や調理法を工夫することで、魚の臭みを最小限に抑え、美味しく
食べることが可能です!


