アオリイカが透明であるのに対して、魚で透明な種がほとんどいないのは、生物の進化や生態、身体構造の違いに理由があります。以下に、魚が透明でない理由を詳しく解説します。
1. 魚とイカの身体構造の違い
(1) 骨格の存在
- 魚:
- 魚には骨格(脊椎)があります。この骨格が透明になるのは非常に難しく、透明性を維持する生物にとって障害となります。
- 骨はカルシウムやリンで構成されており、不透明で硬い性質を持つため、光を透過しません。
- アオリイカ:
- イカには骨格がなく、体を支える「軟甲(甲皮)」があるだけで、これが透明性を可能にする要因の一つです。
(2) 内臓の違い
- 魚:
- 魚は多くの臓器が密集しており、特に肝臓や腎臓などが大きく発達しています。これらの臓器は色素や血液を多く含むため、光を透過しにくい構造です。
- アオリイカ:
- イカの内臓は分散しており、体の一部(外套膜)の大部分が筋肉で覆われています。これが透明性を保つ一因です。
2. 魚とイカの進化的な適応の違い
(1) 魚:反射と色素による保護
- 多くの魚は体表に「鱗」や「色素胞」を持ち、光を反射して周囲に溶け込む「銀色の輝き」を利用しています。
- 銀色の鱗は、水中で光を反射して目立ちにくくなるため、透明性を進化させる必要がありませんでした。
- また、一部の魚は擬態を用いて背景に溶け込むことができます。
(2) イカ:透明性による隠蔽
- アオリイカのような軟体動物は、素早く泳げるものの、魚ほどの速さや持久力を持たないため、透明性で捕食者の目を欺く戦略を選びました。
- 透明性は、浅い海や光の変化が激しい環境で特に有効であり、アオリイカのような生物には適した進化の方向性です。
3. 魚が透明でない理由:生理的制約
(1) 血液の色
- 魚の血液はヘモグロビンを含むため赤色であり、これが透明性を妨げます。
- アオリイカや他の軟体動物の血液はヘモシアニン(銅を含む血色素)を主成分としており、無色または青っぽい色をしています。これにより透明性を高めることができます。
(2) 呼吸の仕組み
- 魚はエラを通じて酸素を取り込み、血液で全身に酸素を運びます。このため、酸素を運ぶための赤血球が不可欠であり、透明な体には適しません。
- アオリイカは皮膚からも酸素を取り込む能力があるため、透明な体でも効率的に酸素を供給できます。
(3) 代謝の違い
- 魚は高い代謝を持ち、筋肉の発達や酸素供給が重要です。そのため、血液や筋肉の密度が高く、透明にすることが難しい構造を持っています。
- 一方、アオリイカは低代謝な部分も多く、透明性を維持するコストが低いと考えられます。
4. 透明な魚がほぼいないが、例外も存在
- 一部の魚には透明性を持つ種がいますが、非常に限られた例です:
- アユモドキ(ガラスキャットフィッシュ)
- 体がほぼ透明で、内臓や骨が透けて見える。
- 小型で水中での透明性が捕食者回避に役立っています。
- デメニギス
- 頭部が透明で、内部の眼球が透けて見える特殊な構造を持っています。
- アユモドキ(ガラスキャットフィッシュ)
これらの魚は特殊な環境(深海や川)で進化しており、透明性がその生態に適応した形で現れています。
5. 透明性の進化が魚で稀な理由
- 透明性を持つには以下の進化的なコストが必要です:
- 骨格を透明にする進化は非常に困難。
- 内臓や血液の構造を変えるには多くの進化的変化が必要。
- 光を反射する鱗の戦略が効率的で、透明性を進化させる必要がなかった。
結果として、魚は銀色や擬態など他の方法で捕食者を回避する方向に進化し、透明性を選ばなかった種がほとんどです。
まとめ
アオリイカが透明であるのに対し、魚が透明でない理由は、魚の骨格、血液、内臓の構造が透明性に適していないこと、進化の過程で透明性よりも鱗や色素による擬態や反射の方が有効だったことにあります。
一部の魚には透明性を持つ例外がありますが、特殊な環境に限られています。
イカの透明性は、生態的な適応として非常に効果的な進化の形といえるでしょう。


