ブリ(Seriola quinqueradiata)は日本近海を含む太平洋の広い範囲に生息している大型の回遊魚です。彼らの回遊(回遊=長距離の移動)は、餌の確保や繁殖のために季節や環境条件によって大きく変化します。ブリの回遊方法は、成長段階や季節、水温、餌の分布などに強く影響されます。以下に、ブリの回遊に関する詳細を説明します。
1. ブリの成長段階と回遊
ブリの回遊は成長段階ごとに異なります。一般的に、ブリはその生涯の中で以下の段階を経ます:
- 幼魚(モジャコ、ワカナゴ):孵化後しばらくは沿岸の浅い海域で過ごします。特に春から夏にかけて、稚魚や幼魚は沿岸域や河口の周辺に留まり、プランクトンや小魚を捕食します。
- 若魚(イナダ、ワラサ):成長するに連れて、ブリは沖合へと移動します。この段階では、比較的近海で餌を探しながら回遊を行いますが、広範囲にわたって移動し始めます。
- 成魚(ブリ):成長が進むと、ブリは季節ごとの大規模な回遊を行うようになります。特に産卵期には大規模な移動が見られます。
2. ブリの季節回遊
ブリの回遊は季節に応じて行われます。以下は日本を中心にしたブリの季節回遊の概要です:
- 春から夏:この時期、ブリは比較的暖かい水域を求めて、主に日本の太平洋沿岸や日本海側に広がる沿岸域に移動します。幼魚や若魚はこの時期に沿岸域に多く見られ、特に春から夏にかけての漁獲量が増えます。
- 秋:秋になると、ブリは日本海側の北の冷たい海域から南へ向かう回遊を開始します。水温の低下とともに、北方からの回遊が始まり、日本海を南下していきます。日本では、これが「寒ブリ」のシーズンにあたります。
- 冬:冬になると、ブリは暖かい水域を求めてさらに南下し、日本列島の南方や東シナ海まで移動します。この時期のブリは脂が乗り、特に寒ブリとして高く評価されます。産卵のために沖縄や九州南部などの暖かい水域に回遊することもあります。
3. ブリの回遊経路
ブリの回遊経路は、水温や餌の供給量に影響を受けますが、以下のような広い範囲を移動します:
- 北西太平洋:ブリは北西太平洋を中心に、餌となる魚を追って大規模に移動します。特に日本海側や太平洋沿岸での回遊がよく知られています。
- 日本海側:ブリは日本海側を南下し、寒い時期には水温の高い地域へ移動します。特に日本海でのブリの漁獲が盛んなのは、秋から冬にかけての南下する回遊時です。
- 太平洋側:太平洋側では、春から初夏にかけて日本列島の東海岸沿いを北上し、秋から冬にかけて南下します。
4. 水温とブリの回遊
ブリの回遊は水温に大きく影響されます。彼らは一般的に**15~25℃**の水温を好み、極端に寒冷または高温な水域は避けます。以下は、ブリの水温に関する回遊パターンです:
- 15~20℃:ブリにとって最も快適な水温帯であり、広範囲に回遊が行われます。この水温帯では活発に餌を探し、成長を促進します。
- 水温低下:水温が低下すると、ブリは暖かい水域へと移動を開始します。特に冬季には、南方の水域へ向かう傾向があります。
- 水温上昇:水温が上昇すると、ブリは比較的涼しい北方や深い水域へ移動します。これが、春から夏にかけての北上の一因です。
5. 餌の分布と回遊
ブリの回遊は餌の分布にも依存します。彼らは主に小魚(アジ、サバ、イワシなど)や甲殻類を捕食しますが、これらの餌資源が豊富な地域を追って移動します。餌が豊富な沿岸域や、沖合の潮目(異なる水温の潮がぶつかる場所)に集まることが多いです。
まとめ
ブリは、成長段階や季節、環境条件に応じて広範囲にわたる回遊を行います。成長に応じて近海から沖合へ、また季節によっては北から南へ、そして水温の変動に応じて適応した移動を行います。これらの回遊パターンにより、ブリは効率的に餌を探し、産卵のための最適な環境を求めています。

