同じ天然のマダイであっても、釣り上げた瞬間に「おや?」と思うことがあります。
写真のように、尾ひれの先端がシュッと鋭く尖っているものもあれば、全体的に丸みを帯びて少し黒ずんでいるものも存在します。
この形の違いは、そのマダイがどのような環境で、どんな「人生(魚生)」を送ってきたのかを雄弁に物語っています。
1. 尖った尾ひれは「外洋の勇者」の証
先端がピンと尖り、美しい紅色をしているのは、潮通しの良い岩礁帯や水深のある外洋で育った個体です。
黒潮の奔流に逆らって泳ぎ、常に速い潮流の中で生活しているマダイは、筋肉が発達し、ヒレの先端までしっかりと栄養が行き渡ります。
また、障害物に接触することが少ないため、ヒレが擦れることなく美しく保たれるのです。
まさに「天然の中の天然」と呼ぶにふさわしい、アスリートのような個体と言えるでしょう。
2. 丸みを帯びた尾ひれが語る「浅瀬の日常」
一方で、先端が丸く、縁が少し黒ずんでいる個体は、比較的浅い入り江や、砂地が混じるエリアで生活していた可能性が高いです。
底付近のエサを活発に追いかけたり、産卵のために浅場へ移動してきた際、海底や岩にヒレをこすりつけることで、先端が少しずつ摩耗して丸くなっていきます。
黒ずみは、修復を繰り返した跡や、生息環境による色素の沈着です。
決して「質が落ちる」わけではなく、その海域で逞しく生き抜いてきたベテランの証なのです。
3. 養殖との違いを見分けるポイント
ちなみに、完全に「養殖」の個体は、狭い生け簀の中で仲間同士が接触し合うため、尾ひれが極端に丸く、欠けていることが多いです。
今回の写真のように、天然同士で微妙な形の違いが出るのは、それだけ南紀の海が多様な環境に富んでいるということ。
釣り上げたマダイの尾ひれを観察するだけで、その魚がどんな潮に乗って旅をしてきたのかを想像することができます。
釣太郎流・尾ひれ観察のススメ
次にマダイを釣り上げたときは、ぜひその「尾ひれの形」をじっくり見てあげてください。
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尖った尾: 激流を潜り抜けてきた、引きの強い「パワーファイター」。
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丸い尾: 地形に寄り添い、豊富なエサを食べて育った「地付きの主」。
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感謝を込めて: どんな形であれ、厳しい自然界で数年、数十年と生き抜いてきた命に敬意を表したいですね。
現場の視点
釣太郎にお持ち込みいただくマダイも、一匹として同じ姿のものはいません。
尾ひれ一枚に刻まれたドラマを感じられるのも、現場に立つ釣り人だけの特権ですよ。

