アオリイカ釣り(エギング・ヤエン)をしていると、よく耳にする「白系」「赤系」という言葉。
「色が違うだけで同じ種類じゃないの?」
「地域によって呼び方が違うだけ?」
そんな疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、アオリイカの白系・赤系は、遺伝子レベルで異なる別種(または別種レベルの
集団)であることが科学的に判明しています。
単なる釣り人の俗説や、一時的な体色の変化ではありません。
今回は、アオリイカの「3つのタイプ」について、学術的な根拠と釣り人が知っておくべき特徴を解説します。
アオリイカは1種類ではなかった
長年、アオリイカは学術的には「Sepioteuthis lessoniana」という1種類のみとされてきました。
しかし、近年の遺伝子解析(アイソザイム分析など)の研究により、日本近海のアオリイカには
遺伝的に交わらない3つの異なる集団が存在することが明らかになっています。
まだ正式な「和名」や「別々の学名」こそ付いていませんが、研究者の間でも
以下の3タイプに分類されています。
-
シロイカ型(白系)
-
アカイカ型(赤系)
-
クアイカ型
これらは同じ海域にいても交雑(ハーフ)が生まれないため、実質的には「別の種類のイカ」
と考えて間違いありません。
3つのタイプの特徴と違い
それぞれの特徴を整理してみましょう。
1. シロイカ型(白系)
私たちが普段、堤防や磯でもっともよく目にするのがこのタイプです。
-
生息域: 日本全国の沿岸部に広く分布。
-
サイズ: 最大で3kg程度。
-
特徴: エンペラ(耳)が丸みを帯びている。
-
産卵: 1つの卵嚢(カプセル)に入っている卵の数は平均5〜6個。
-
釣り: 春から秋にかけて浅場に入ってくる、最もポピュラーなターゲットです。
2. アカイカ型(赤系・レッドモンスター)
釣り人が「レッドモンスター」と呼んで憧れるのがこのタイプです。
黒潮の影響を受ける海域(沖縄、九州、そして和歌山県の南紀エリアなど)に多く見られます。
-
生息域: 暖流(黒潮)のあたる深場を好む。
-
サイズ: 成長が早く、4kg〜5kgを超える巨大サイズになる。
-
特徴: 全体的に赤みが強く、シロイカ型に比べて胴長でスマートな体型。
-
産卵: 1つの卵嚢に入っている卵の数は平均9〜10個と多い。
-
釣り: 南紀エリアでは冬から春にかけて、深場から産卵のために接岸してくる大型を狙います。
3. クアイカ型
もっとも小型のタイプで、主に南西諸島(沖縄や奄美など)のサンゴ礁域に生息しています。
-
生息域: サンゴ礁の浅瀬。
-
サイズ: 大きくなっても1kg未満と小型。
-
特徴: 1つの卵嚢に入っている卵の数が2個程度と極端に少ない。
-
釣り: 本州での釣果報告はほとんどありません。
科学的な根拠:なぜ「別種」と言えるのか?
「色が違うだけなら、人間でいう肌の色のようなものでは?」と思うかもしれません。
しかし、決定的な違いは**「産卵生態」と「遺伝子」**にあります。
三重大学や東京水産大学(現・東京海洋大学)などの過去の研究によると、同じ水槽で飼育しても、
別々のタイプ同士は交尾を行わない傾向があることが示唆されています。
また、先述した「卵嚢の中の卵の数」が明確に異なります。
-
白系: 1房に約5〜6個
-
赤系: 1房に約9個以上
-
クアイカ: 1房に約2個
ダイビング調査や漁獲調査でも、これらの特徴は混じり合うことなく区別されているため、
これらは「完全に別の生活史を持った生き物」であることが証明されています。
まとめ:南紀は「赤系」と「白系」が混在する激熱エリア
この話が釣り人にとって重要なのは、**「狙っているイカによって習性が違う」**という点です。
特に和歌山の南紀エリアは、普段居着いている「白系」に加え、黒潮に乗ってやってくる
巨大な「赤系」の両方が狙える稀有なフィールドです。
-
白系は、藻場や穏やかなワンドを好みます。
-
赤系は、潮通しの良い岬の先端や、深場に隣接したエリアを回遊します。
「アオリイカ」とひとくくりにせず、「今は白系を狙っているのか、
赤系の一発大物を狙っているのか」を意識することで、ポイント選びや
攻め方が変わってくるはずです。
ぜひ、この科学的な知識を次回の釣行に役立ててください。

