なぜ人は「アオリイカの遊泳」に魅了されるのか? みなべ店水槽で歓声が上がる理由と、その泳ぎ方の秘密。

水族館のある水槽の前で、ひときわ大きな歓声が上がることがあります。

人々はスマートフォンを構え、その姿を一瞬たりとも逃すまいとレンズを向けます。

「うわ、すごい…」 「生まれて初めて生きた姿を見た…!」

その視線の先にいるのは、海のハンター、「アオリイカ」です。

釣り人、特にエギンガーにとっては馴染み深い存在ですが、多くの人にとって、その「生きた遊泳シーン」は衝撃的な感動を与えます。

なぜ、アオリイカの泳ぐ姿は、これほどまでに私たちを魅了するのでしょうか。

その秘密は、他のどんな生物とも異なる、独特の「泳ぎ方」と「生態」に隠されています。

1. 詩に詠まれるほどの「優雅」— エンペラが織りなす水の舞

アオリイカの最大の特徴は、胴体(外套膜)のほぼ全体を縁取る、大きなヒレです。

これは「エンペラ(俗に耳とも呼ばれる)」と呼ばれ、アオリイカを「イカの王様」たらしめる所以(ゆえん)でもあります。

彼らはこのエンペラを、まるでシルクのドレスのように複雑に波打たせることで、水中を自由自在に移動します。

  • 前進・後進・横移動: ヒレの波を巧みに操り、ゆっくりと泳ぎます。
  • ホバリング(空中停止): 一切のブレなく、水中の決まった位置にピタリと留まることができます。

この、まるで重力を無視しているかのような優雅な動きこそが、人々が息をのむ第一の理由です。

2. 「透明」と「色彩」— 一瞬で変わる体色の神秘

アオリイカの体は、平常時、特に幼体は高い透明度を誇ります。 しかし、彼らの皮膚の下には「色素胞(しきそほう)」と呼ばれる、色の詰まった小さな袋が何百万と備わっています。

  • 感情や意志で色が変わる: 興奮したり、威嚇したり、周囲の環境に擬態したりする際、この色素胞を一瞬で拡大・収縮させます。
  • 電光石火のシグナル: 透明だった体が、次の瞬間には真っ赤に、あるいは真っ黒に変わる。この劇的な変化は、彼らが「生きている」ことを強烈に印象付けます。

水槽の前で「色が変わった!」と驚きの声が上がるのは、このためです。

3. 「静」と「動」のギャップ — 驚異のジェット噴射

アオリイカの魅力は、優雅さだけではありません。

彼らは体内に取り込んだ海水を、「ロート(漏斗)」と呼ばれる管から一気に噴射することで、爆発的な推進力を得ることができます。

これこそが「静」から「動」への切り替えです。

普段はエンペラを使い、ゆらりゆらりと泳いでいる個体が、エサを見つけたり、危険を察知したりした瞬間、ロートを使って「矢」のように飛んでいく。

そのスピードと瞬発力は、見ている者の心を鷲掴みにします。

(エギングでイカがヒットした時の、あの強烈な「ジェット噴射」の引きは、この力によるものです)

4. まとめ:生きたアオリイカを見る「特別な体験」

釣り人にとっては、釣りのターゲットとして、また「美味しい食材」として身近なアオリイカ。

しかし、その生きた姿、特に「遊泳シーン」をじっくりと観察できる機会は、実は非常に貴重です。

水族館で人々が興奮し、感動する姿は、アオリイカという生物が持つ「生命の神秘」がいかに特別であるかを、私たちに再認識させてくれます。

優雅なヒレの動き、一瞬で変わる体色、そして静から動への爆発的なギャップ。

もし水族館や、あるいは海辺で彼らの泳ぐ姿を見かけることがあれば、ぜひその「水の舞」をじっくりと観察してみてください。

きっと、あなたもその魅力の虜になるはずです。

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