「自分は泳ぎに自信があるから、ライフジャケットは着なくても大丈夫」
釣りを愛する皆さんの中に、そう考えている方はいませんか?
少し動きにくいし、夏は暑い。気持ちはとてもよく分かります。
しかし、その「泳げる」という自信が、時として取り返しのつかない事態を招くことをご存知でしょうか。
海の安全を守るプロである海上保安庁も警鐘を鳴らしています。
今回は、なぜ「泳げるから大丈夫」が通用しないのか、その恐ろしい理由と、あなたの命を
守るために本当に必要なことについて、徹底的に解説します。
あなたの「泳ぎの自信」を打ち砕く5つの海の脅威
プールや穏やかな海水浴場で泳ぐことと、予期せず海に落ちることは全くの別物です。
そこには、あなたの想像を絶する脅威が待ち構えています。
1. 突然の落水による「パニック」と「衝撃」
まず想像してください。足元の磯が崩れた、船が不意に大きく揺れた。
予期せぬ瞬間に冷たい水の中へ叩きつけられるのです。
- 呼吸困難: 突然の衝撃と冷たさで呼吸が乱れ、うまく息ができなくなります。
- パニック: 冷静でいられる人はいません。パニック状態に陥り、正常な判断力を失います。
- 着衣の抵抗: 衣服が水を吸って鉛のように重くなり、手足の自由を奪います。特に、冬場の防寒着は致命的です。
この状況で、冷静に、いつも通り泳ぐことなど到底不可能です。
2. あっという間に体温を奪う「低体温症」
「夏だから水温も高いだろう」は大きな間違いです。
人間の体温(約36℃)に比べれば、真夏の海水温(約25℃前後)でさえ、あなたの体温を奪い続けるには十分な冷たさです。
海上保安庁によると、水温20~25℃の水中でも、1~2時間で意識不明になる可能性があります。
水温が10℃を下回る冬の海では、わずか数分~数十分で体の自由が利かなくなり、死に至ることもあります。
泳ぐどころか、体温の低下で筋肉が硬直し、手足が動かなくなるのです。
3. 人力では抗えない「潮の流れ」と「波」
海には、目には見えない強力な流れがあります。
- 潮流: 離岸流などに捕まれば、どんなに泳ぎが得意な人でも岸に戻ることは困難です。
- 波: 波はあなたの体力を無情に奪い、呼吸のタイミングを狂わせます。岩場やテトラポッドに叩きつけられる危険性も常に付きまといます。
あなたの泳力は、大自然の力の前ではあまりにも無力です。
4. 生死を分けるデータ。ライフジャケット着用の生存率
これが最も重要な事実です。
海上保安庁のデータによると、海中転落者のライフジャケット着用・非着用による生存率は、
2倍以上の差が出ています。
<令和5年 海中転落者の生存率>
- ライフジャケット着用者:94%
- ライフジャケット非着用者:45%
(出典:海上保安庁 海の安全情報)
この数字が全てを物語っています。
「もしライフジャケットを着ていれば助かった命」が、毎年たくさんあるのです。
ライフジャケットは、あなたの「泳力」を補助するものではありません。
意識を失っても、低体温症で動けなくなっても、あなたの体を浮かせ、救助を待つための最後の命綱なのです。
5. 家族や大切な人を悲しませないために
万が一のことがあった時、最も悲しむのは誰でしょうか?
あなたの帰りを待っている家族、友人、大切な人たちです。
「自分は大丈夫」という根拠のない自信が、取り返しのつかない悲劇を生む可能性があります。
釣りは、無事に家に帰るまでが釣りです。
まとめ:ライフジャケットは、全ての釣り人のための「お守り」です
ライフジャケットは、泳げない人のためだけの道具ではありません。
泳ぎに自信があるベテランも含め、海に出る全ての人の命を守るための必須装備です。
- 必ず国の安全基準に適合した「桜マーク」付きのものを選びましょう。
- 体にフィットするサイズを正しく着用しましょう。
- 股下ベルトを必ず装着しましょう。(落水時にすっぽ抜けるのを防ぎます)
次の釣行から、必ずライフジャケットを着用してください。
それは、あなた自身のため、そしてあなたの大切な人を悲しませないための、釣り人としての最低限のマナーであり、責任です。
最高の趣味である釣りを、生涯安全に楽しむために。
今日のこの記事が、あなたの安全意識をアップデートするきっかけになれば幸いです。


