エギング(餌木釣り)のターゲットとして絶大な人気を誇るアオリイカ。
秋には手のひらサイズの子イカが数釣れて楽しませてくれますが、春には3kgを超えるような
「モンスター」が釣り人の夢を掻き立てます。
「あの秋の子イカが、本当にあんなに大きくなるの?」 「一体どれくらいの速さで成長しているんだろう?」
そんな疑問を持つ方のために、ここではアオリイカが卵から孵化し、わずか1年で3kg級へと
成長する、儚くも力強い一生の軌跡を解説します。
大前提:アオリイカの寿命は、わずか「約1年」
まず最も重要な事実として、アオリイカの寿命は基本的に約1年しかありません。
この短い期間で、米粒ほどの大きさから産卵できる親イカへと急成長を遂げ、子孫を残してその一生を終えるのです。
この「一年」という期間が、彼らの驚異的な成長速度を理解する上での鍵となります。
アオリイカの成長ステージ別解説
ステージ1:誕生【春〜夏:5月〜8月】孵化直後は米粒サイズ
産卵期(4月〜7月): 南紀エリアでは春になると、前年に生まれた親イカたちが産卵のために浅場の藻場(アマモなど)にやってきます。
ここで、房状の卵が海藻に産み付けられます。
孵化(5月〜8月): 水温にもよりますが、産卵から約1ヶ月ほどで卵から孵化します。
孵化したばかりの赤ちゃんイカは、胴長わずか数ミリ〜1cm程度。見た目はほとんどプランクトンのようです。
ここから、彼らの猛烈な成長がスタートします。
ステージ2:急成長期・新子の季節【夏〜秋:8月〜11月】
- 8月頃: 胴長5cm、重さ50g前後まで成長。まだ非常に小さいですが、活発にエサを追い始めます。
- 9月〜10月: まさに現在のこの時期、エギングシーズン最盛期です。沿岸の浅瀬で活発に小魚を捕食し、日に日に大きくなっていきます。
- 9月: 胴長10cm前後、重さ100g〜200g(コロッケサイズ)
- 10月: 胴長15cm前後、重さ300g〜500g(トンカツサイズ)
- 11月頃: 重さが500g〜800gに達する個体も現れます。この時期までが、数釣りを最も楽しめるシーズンとなります。
ステージ3:深場への移動と越冬【冬:12月〜2月】
- 12月以降: 水温の低下に伴い、アオリイカの群れは水温の安定する深場へと移動していきます。沿岸での目撃情報は減りますが、深場でエサを捕食し、着実に成長を続けています。
- 1月〜2月: この時期を生き延びた個体は、重さ1kgを超える「キロアップ」サイズへと成長します。厳しい冬を乗り越えることで、大型化への道を歩み始めます。
ステージ4:最終形態・モンスターへの道【春:3月〜5月】
- 3月以降: 産卵を意識し始め、体力を蓄えるために再び浅場に隣接するエリアで荒食いを始めます。これが人生(イカ生)最後の、そして最大の急成長期です。
- 4月〜5月:
- 2kgを超える大型個体が次々と出現。
- そして、孵化からわずか10ヶ月〜12ヶ月で、一部の成長の早い個体が夢の3kgサイズへと到達します。
この3kgというサイズは、春に産まれた命が、過酷な自然界を生き抜き、驚異的なスピードで成長を遂げた証なのです。
そして、このモンスター級に成長した親イカたちが、次の世代の命を産み、また新たな1年のサイクルが始まっていきます。
まとめ
アオリイカの成長速度は、まさに驚異的の一言に尽きます。
- 春に産まれ、夏から秋にかけて沿岸で爆発的に成長する。
- 冬に深場で生き延びた個体が、翌年の春に産卵を控えて最後の急成長を遂げる。
- わずか1年という短い一生で、数グラムから3kgという巨体へと変貌する。
私たちが秋に愛でる子イカの姿と、春に追い求めるモンスターの姿。
その間にある力強い生命のドラマに思いを馳せると、次の一杯がさらに価値あるものに感じられるかもしれません。


