【詩的コラム】海に漂う、持ち主不在のエギ──釣り人の夢を映す遺物
透明な潮の中
ゆらり、ゆらりと揺れていたのは
ひとつのエギ。
かつて誰かの夢を背負い
アオリイカとの駆け引きを演じた道具。
だがいまは、砂利まじりの海底で
ひとり静かに眠っている。
持ち主を失ったエギが語るもの
このエギは、どんな物語を持っていたのだろうか。
あるいは、ベテラン釣り師が放った一投だったかもしれない。
あるいは、初めて買った初心者の、最初で最後のルアーだったかもしれない。
藻にひっかかり、
根がかりし、
あるいはイカに抱かれてそのまま引きちぎられたのかもしれない。
残されたのは、
ただ潮に身を任せる、寡黙な影ひとつ。
エギは消耗品、でもただの道具じゃない
釣り人にとってエギは、「仕掛け」以上の存在。
水中のアートであり、技術の結晶であり、
時には語り合う友のような存在でもある。
だからこそ、
こうして水中に沈む一本を見るたびに
胸の奥が少しだけ、きゅっとなる。
自然の中で消える道具たち
忘れ去られたエギはやがて、
貝に覆われ、藻に埋もれ、
海の一部になっていく。
自然は容赦なく
人工物を呑み込み、還していく。
でもその姿を見た釣り人には、
ふとした教訓をくれるかもしれない。
・一投一投を大切にしよう
・釣れなくても、道具と会話しよう
・自然の中に道具を残さない工夫をしよう
最後に:海に残されたエギに敬意を
このエギは、
たしかに何かを釣ったのかもしれない。
魚ではなく、
釣り人の記憶や、喜びや、悔しさを。
そしていま、
それを見つけた私たちの心にも
小さな波紋を広げてくれた。
海に眠る道具に、ありがとう。
次はもう少し、丁寧に釣ろうと思う。



