カマスを釣った際、一番美味しい食べ方を聞かれれば、迷わず「炙り(あぶり)」と答えます。
刺身でもなく、ただの焼き魚でもない。
皮目をサッと火でなでるだけのこの調理法が、なぜこれほどまでに人を虜にするのでしょうか。
1. 皮と身の間に眠る「濃厚な脂」
カマスの最大の魅力は、その独特な皮の旨みにあります。
実はカマスの脂の大部分は、皮と身の間のごくわずかな層に集中しています。
そのまま刺身で食べると、この脂は冷えて固まった状態ですが、火を加えることで劇的な変化が起こります。
2. バーナーの熱が引き出す「旨みのオーバーフロー」
バーナーの高温で皮目を炙った瞬間、閉じ込められていた脂がジュワッと溶け出し、身の表面に浸透していきます。
この「溶け出した脂」こそが、カマス特有の芳醇な香りと甘みの正体です。
また、皮自体を焦がすことで生まれる香ばしさがアクセントとなり、淡白な白身の味を何倍にも引き立てるのです。
3. 「温」と「冷」の究極のコントラスト
炙りの醍醐味は、表面の脂は熱く溶けているのに、中の身はひんやりと引き締まった「レア」な状態を楽しめることです。
一口食べれば、パリッとした皮の食感の後に、とろける脂の甘み、そしてカマス本来の瑞々しい食感が押し寄せます。
この三位一体の味わいは、まさに釣り上げた直後の鮮度があるからこそ成立する魔法です。
釣太郎の視点:最高の炙りを作るコツ
カマスの炙りを成功させる秘訣は、炙った直後に「氷水に入れない」ことです。
氷水に潜らせてしまうと、せっかく溶け出した黄金の脂が流れ落ちてしまいます。
炙った後はそのまま、あるいは冷蔵庫で数分だけ落ち着かせてから、岩塩やカボスでいただくのが釣太郎流の贅沢な食べ方です。

