今の若いアングラーが見たら、「えっ、これで魚釣ってたの?」と腰を抜かすかもしれません。
スマホもGPSも、高性能なPEラインもなかった時代。
それでも、当時の釣り人たちは、熱気と工夫でデカい魚を追いかけていました。
今回は、便利になりすぎた現代へのアンチテーゼも込めて。
愛すべき「昭和の釣りスタイル」を、南紀の現場から振り返ります。
オジサン世代は涙して懐かしがり、若者はそのワイルドさに震えてください。
1. 道具は「筋トレ」グッズだった
今のロッド(竿)は、カーボン製で驚くほど軽いです。
一日中振っても疲れません。 しかし、昭和の主流は 「グラスロッド」 でした。
特徴: とにかく重い。 そして、ベロンベロンに柔らかい。
一日振れば、腕はパンパン、翌日は筋肉痛確定です。
感度?
そんなものはありません。
「魚が掛かったら竿が曲がる」、ただそれだけのアナログな信号を頼りにしていました。
でも、あの粘り強さは凄かった。 折れにくさだけは、今の高級ロッドより上かもしれません。
2. ラインは「伸びる」が当たり前
今は伸びない「PEライン」が常識ですが、当時は 「ナイロンライン」 一択。
しかも、視認性を重視した、目がチカチカするような蛍光イエローやオレンジが主流でした。
特徴: ゴムのように伸びます。 だから、アタリがあっても「ビシッ!」と合わせが決まりにくい。
根掛かりしたら、ビヨーンと伸びて、なかなか切れないから逆に大変。
リールもドラグ性能なんてオマケみたいなもので、大物がかかったら「逆回転レバー」をオンにして、ハンドルを逆回しして糸を出していました。
指ドラグ(指でスプールを押さえてブレーキをかける技)が必須スキルだったんです。
3. 情報源は「新聞」と「噂」
「Googleマップ」でポイントを探す?
「SNS」で釣果を見る? そんな魔法はありません。
昭和の釣り人のバイブルは、駅の売店で買う 「スポーツ新聞の釣り欄」 でした。
特徴: 情報は常に数日遅れです。
「○○で爆釣!」という記事を見て週末に行くと、もう魚はいないこともしばしば。
だからこそ、最強の情報源は 「釣具屋のオヤジ」 と 「現地での聞き込み」 でした。
店に入って、エサを買いながら「オヤジ、最近どこが上がってる?」と聞く。
このコミュニケーションこそが、釣果への唯一の近道だったのです。
釣太郎が今も「現場の情報」にこだわる原点は、ここにあります。
4. ファッションは「機能」より「気合い」
今のウェアは、防水透湿素材(ゴアテックスなど)で快適です。
昭和の釣り人は違います。
夏はランニングシャツ(タンクトップ)に、頭にはネジリ鉢巻き。
雨が降れば、重たくて蒸れるゴム引きのカッパ(漁師ガッパ)を着込みました。
特徴: 暑さは根性で耐える。 腰には、得体の知れない万能ナイフと、タバコをぶら下げる。
ラジオから流れる野球中継を聞きながら、アタリを待つ。
それが「粋」なスタイルでした。 日焼け止め? 男は黙って真っ黒に焼けるのが勲章だった時代です。
5. エサは「現地調達」か「練り餌」
オキアミブロックが今ほど安く大量に流通する前は、エサの確保も一苦労でした。
フナ虫を捕まえたり、貝を割ったり。
そして、万能エサといえば 「魚肉ソーセージ」 や、小麦粉を練っただけの 「うどん」 。
特徴: 魚も今ほどスレて(警戒して)いなかったので、ソーセージでもパンの耳でも、なんでも食ってきました。
「どうやって食わせるか」よりも、「そこに魚がいるかどうか」が全ての勝負。 おおらかな時代でしたね。
【まとめ】不便だからこそ、面白かった
道具は進化し、釣りは快適になりました。 それは素晴らしいことです。
でも、「釣れなかったら道具のせい」にできる今とは違い、昭和は「釣れないのは腕のせい」でした。
不便さを、知恵と工夫と根性でカバーする。
あの泥臭いプロセスの中に、釣りの本質的な面白さが詰まっていた気がします。
最新の道具を使いつつも、昭和の釣り人のような「野性的な勘」と「現場を足で稼ぐ姿勢」。
これを持った釣り人が、結局は一番強いんです。

