「せっかく釣ったアジだから、まずは刺身で食べよう。」
そう思って食べてみたけれど、「あれ?思ったより味が薄いな」「水っぽいだけで旨味がないな」
と感じたことはありませんか。
しかし、残った同じアジを翌日フライにしてみたら、「ふわふわで最高に美味い!」と感動する。
実はこれ、釣り人あるあるであり、魚料理の真髄をついた現象なのです。
今回は、アジを例にして「なぜ調理法を変えるだけで、評価が『まあまあ』から
『絶品』に変わるのか」を解説します。
1. 「刺身でイマイチ」なアジの正体
刺身で食べて感動が薄いアジには、明確な特徴があります。
それは「脂の乗りが少ない」ことと「水分が多い」ことです。
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回遊型の黒アジ(セグロ): 沖合を泳ぎ回るため筋肉質ですが、脂の乗りは控えめです。
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産卵後の個体: 卵や白子に栄養を取られ、身が痩せている状態です。
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小型のアジ: まだ成長途中で、脂を蓄える段階に至っていません。
これらのアジを刺身にすると、舌の上で溶けるような脂の甘みがなく、さっぱりとしすぎて物足りなさを感じてしまうのです。
これが「まあまあ」という感想の原因です。
2. なぜフライにすると「絶品」に化けるのか?
では、なぜ同じアジが油で揚げるだけで劇的に美味しくなるのでしょうか。
理由は「足りない要素を油が補ってくれるから」です。
理由①:油分(脂)のドーピング
刺身で足りなかった「脂」を、揚げ油が物理的に補います。
淡白な身に油のコクが加わることで、人間が「美味しい」と感じる黄金バランス(旨味+油分)が完成します。
脂ギトギトの霜降り肉を揚げるとくどくなりますが、脂の少ないアジだからこそ、油との相性が抜群に良くなるのです。
理由②:水分が抜けて食感が向上する
水っぽい身を刺身で食べるとグニュッとした食感になりますが、揚げると高温で水分が適度に飛びます。
その結果、身の中に空気を含んだような「フワッフワ」の食感が生まれます。
これは、脂が乗った身の締まったアジでは出せない、水分の多いアジならではの軽やかな食感です。
つまり、「刺身には向かないアジ」こそが、「最高のアジフライの素材」になり得るのです。
3. 「刺身」か「加熱」か、見た目で判断するコツ
釣ったアジをクーラーボックスから出すとき、どちらの料理にするか迷ったら、ここを見てください。
刺身・たたき向き(脂ノリノリ)
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体高がある: 背中とお腹に張りがあり、丸みを帯びている。
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全体的に黄色っぽい: 居付きのアジ(キアジ)の特徴で、脂が乗っている証拠。
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顔が小さい: 体に対して顔が小さく見えるのは、身が太っている証拠。
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判定: 迷わず刺身やなめろうで、素材の脂を楽しんでください。
フライ・塩焼き向き(サッパリ)
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細長い(スマート): シュッとしていて、厚みがあまりない。
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全体的に黒っぽい: 回遊型のアジに多い特徴。
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判定: 油を使う料理(フライ、南蛮漬け、ムニエル)がベスト。 塩焼きにするなら、オリーブオイルを垂らして焼くなど、油分を足すと美味しくなります。
4. 失敗なんてない、あるのは「適材適所」だけ
「今日のアジは脂がなくてハズレだった」と嘆く必要はありません。
それは「最高のアジフライ用のアジが釣れた」ということです。
プロの料理人は、脂の乗った高い魚だけを使っているわけではありません。
その魚のポテンシャルを見極め、足りない部分を調理法で補うことで「絶品」を作り出しています。
まとめ
「刺身で食べて美味しい魚」だけが、良い魚ではありません。
調理法という魔法をかけることで、どんな魚も主役級の輝きを放ちます。
次回、釣太郎でアジ釣りを楽しんだ後は、魚の体型をじっくり観察してみてください。
「こいつは刺身担当」「こっちはフライ担当」と選別する時間も、釣りの楽しみの一つになるはずです。
もし判断に迷ったら、お店でスタッフに魚を見せてください。 最適なメニューをご提案します。

