お寿司屋さんやスーパーで並ぶ「マグロ」と「カツオ」。
どちらも赤身の魚で、泳ぐのが速い回遊魚という共通点があります。
しかし、この2種は生物学的にどこまで近い存在なのでしょうか?
実は、彼らは**「同じ科・同じ族」に属する、非常に近い親戚関係**にあります。
人間で言えば「兄弟」というよりは「従兄弟(いとこ)」に近い距離感です。
今回は、マグロとカツオの遺伝的なつながりと、進化の過程で分かれた「決定的な違い」について解説します。
1. 分類上の正体:どちらも「サバ科」のエリート
まず、魚としての住所(分類)を見てみましょう。 驚くことに、マグロもカツオも、広い意味では「サバ」の仲間です。
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目: スズキ目
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科: サバ科(Scombridae)
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族: マグロ族(Thunnini)
ここまでは全く同じです。
サバ科の中には「サバ族」「サワラ族」「ハガツオ族」などがいますが、マグロとカツオは選ばれし**「マグロ族」**という同じグループに属しています。
この「マグロ族」に入っていることが、遺伝的に近いことの証明です。
ここで道が分かれる
同じ「マグロ族」の中で、さらに細かい分類(属)で初めて道が分かれます。
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マグロ: マグロ属(クロマグロ、キハダ、ビンチョウなど)
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カツオ: カツオ属(カツオ ※1種のみ)
つまり、**「同じ屋根の下(マグロ族)で暮らす、別の苗字の親戚」**という関係性が一番しっくりきます。
2. 遺伝的な「最大」の共通点:変温動物ではない!?
マグロとカツオが、他のサバやアジと決定的に違う点があります。
それは**「奇網(きもう)」**という特殊な血管構造を持っていることです。
通常の魚は、水温に合わせて体温が変わる「変温動物」です。
しかし、マグロとカツオは、泳いで発生させた熱を体内に留め、水温よりも高い体温を維持することができます。
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共通能力: 高い体温を維持することで、冷たい海でも筋肉をフル稼働させ、高速で泳ぎ続けることができる。
この「擬似的な恒温性(体温維持能力)」を持っているのは、魚類の中でもマグロ族(マグロ・カツオ)と一部のサメ(ホオジロザメなど)くらいです。
この特殊能力を共有していることこそ、彼らが遺伝的に極めて近い存在である証拠です。
3. 進化の過程で生まれた「違い」
遺伝的には近いものの、進化の戦略は異なります。
①「浮袋」の有無
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マグロ(多くの種): 浮袋がある。 巨体を維持し、深い海や長距離を効率よく移動するために浮袋を発達させました(※キハダやクロマグロ)。
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カツオ: 浮袋がない。 カツオは浮袋を捨て、常に泳ぎ続けることで揚力を得るスタイルを選びました。 これにより、急潜行や急浮上といったアクロバットな動きが得意です。 釣りにおいてカツオが強烈に横走りしたり、急に深場へ突っ込んだりするのは、浮袋がなく水圧調整が不要だからです。
② サイズと寿命の戦略
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マグロ: 「大きく長く」生きる戦略。 クロマグロなどは数メートル、数十年生きる個体もいます。
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カツオ: 「太く短く」生きる戦略。 カツオの寿命は長くても10年程度(多くは数年)。 早く成長し、大量に産卵して数を増やす戦略をとっています。
4. まとめ:食卓での違いはここから来ている
マグロとカツオは、「サバ科マグロ族」という同じルーツを持つ、非常に近い親戚です。
しかし、長い進化の過程で以下のようにスタイルを変えました。
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マグロ: 浮袋を持ち、巨大化して外洋の王者に。 筋肉に酸素を貯めるミオグロビンが多いため、濃厚な赤身になる。
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カツオ: 浮袋を捨て、機動力重視のスピードスターに。 運動量が凄まじいため、さっぱりしつつも鉄分(血の気)を感じる味わいになる。
釣り場や食卓で「こいつらは従兄弟なんだな」と思い出しながら味わうと、また違った面白さがあるかもしれません。

