冬の釣り場、手がかじかむほどの寒さの中で「今日は水温も下がってダメだろう」と諦めていませんか。
一般的な堤防や内湾であれば、その判断は正しいかもしれません。
しかし、ここ南紀においては、その常識は必ずしも当てはまりません。
主役は、世界最大級の暖流「黒潮」です。
実は黒潮には、冬の冷気さえも無効化するほどの、桁外れのエネルギーが隠されています。
今回は、なぜ黒潮が他の潮流と違い、冬でも高い水温を維持できるのか、その科学的理由を解説します。
見出し1:海の水は「池」ではなく「川」である
まず、一般的な水温低下のイメージを変える必要があります。
多くの人は、海水を「洗面器に溜めたお湯」のようにイメージしがちです。
外気(気温)が下がれば、洗面器のお湯も冷めていきます。
これは瀬戸内海や内湾など、水の入れ替わりが少ない場所では正解です。
しかし、黒潮は「巨大な川」です。
赤道付近で温められた膨大な熱量の水が、秒速2メートル近い猛スピードで北上してきます。
つまり、南紀の目の前を流れている黒潮は、日本付近で冷やされた水ではなく、「ついさっきまで南国にいた水」なのです。
常に新しいお湯が蛇口から注がれ続けているお風呂と同じで、外気が少々冷たくても、その供給スピードが早すぎるため、冷める暇がないのです。
見出し2:他の海流とは「厚み」が違う
日本近海には他にも海流がありますが、黒潮が別格なのはその「厚み(深さ)」にあります。
表面だけでなく、水深数百メートルまで暖かい水の塊が移動しています。
これだけの体積があると、表面が冬の寒風に晒されて多少冷やされても、全体の熱量はほとんど奪われません。
これを「熱慣性が大きい」と言います。
そのため、他の海域が水温12度や10度まで落ち込む厳寒期であっても、黒潮本流が差し込む
エリアでは、平気で18度〜20度をキープし続けるという異常事態が起きます。
見出し3:運命を分けるのは「接岸」か「離岸」か
では、南紀ならいつでも暖かいのかというと、そうではありません。
ここで重要になるのが黒潮の「蛇行(だこう)」です。
黒潮は生き物のように動き、岸に近づいたり(接岸)、遠ざかったり(離岸)します。
「接岸」: 黒潮の暖かい水が堤防近くまで押し寄せます。
真冬でも魚の活性が上がり、爆釣モードになります。
「離岸」: 黒潮が沖へ去り、代わりに底から冷たい水(冷水塊)が湧き上がって入ってきます。
こうなると水温は急降下し、南紀といえども厳しい釣りになります。
つまり、南紀の釣り人が気にすべきは「気温」ではなく、「今日の黒潮との距離」なのです。
見出し4:生態系を変えるほどの「温度の壁」
この特異な環境のおかげで、南紀では本来なら冬眠状態になるはずの魚が動き続けます。
アオリイカ(レッドモンスター)が巨大化するのも、グレ(メジナ)が真冬に荒食いするのも、この黒潮の恩恵です。
一般的な海域では、水温15度を切ると多くの魚が活動を停止しますが、黒潮の影響下にある
南紀では、その「死のライン」を割ることが極めて少ないのです。
これは、他の地域の冬釣りとは全く別のゲームが行われていることを意味します。
まとめ
南紀の海において、「気温の低下=水温の低下」という単純な図式は成立しません。
そこには「黒潮」という、地球規模の熱エネルギー供給システムが働いているからです。
寒波が来ても、黒潮さえ接岸していれば、海の中はパラダイスです。
釣りに出かける前は、天気予報の気温を見るよりも、黒潮の流路図(水温分布図)をチェックしてください。
それが、南紀で冬の爆釣を掴むための、最も科学的な攻略法です。

