市場で珍しいお客さんに遭遇しました。
氷の上にちょこんと乗っている、ユニークなシルエット。
数年ぶりに見る「タツノオトシゴ」です。
普段狙って釣れる魚ではありませんが、たまに定置網などに掛かって水揚げされることがあります。
海の中で泳いでいる姿はダイビングなどで人気ですが、こうして間近で見ると改めてその奇妙な形に驚かされます。
今回は、この愛嬌たっぷりの「タツノオトシゴ」について、釣り人でも意外と知らない生態をご紹介します。
実は「魚」の仲間です
一見するとエビやカニのような甲殻類、あるいは全く別の生き物に見えますが、
タツノオトシゴは分類上**「トゲウオ目ヨウジウオ科」に属する立派な「魚」**です。
よーく観察してみると、ちゃんとエラ呼吸をしていて、背中には小さな背びれ、顔の横には胸びれがあります。
ただ、泳ぎは非常に苦手。 尾びれがない代わりに、長い尻尾を海藻やロープにクルクルと巻き付け
て、潮に流されないように体を固定して生活しています。
究極のイクメン?「オスが出産する」神秘
タツノオトシゴ最大の特徴といえば、なんといっても**「オスが子供を産む」**ことでしょう。
正確には、メスがオスの腹部にある「育児嚢(いくじのう)」という袋に卵を産み付け、
オスがその中で稚魚になるまで育ててから放出します。
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メスから卵を預かる
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袋の中で酸素や栄養を与えて育てる
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お腹を痛めて出産する
これら全てをオスが担当します。
求愛のダンスをして、お腹を大きく膨らませて子育てをする姿から、
「愛妻家」や「夫婦円満」のシンボルとも言われています。
南紀で見られる種類は?
今回見かけた個体、サイズや吻(口先)の長さから推測すると、**「オオウミウマ」**という種類かもしれません。
日本近海で見られるタツノオトシゴの仲間には、以下のような種類がいます。
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タツノオトシゴ(標準和名):頭の上に高い突起(コロネット)があるのが特徴。
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オオウミウマ:大型になり、黒っぽい個体が多い。南紀でもよく見られます。
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ハナタツ:少し小ぶりで、体に皮弁(ひらひら)がついていることが多い。
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サンゴタツ:サンゴ礁域に多いが、和歌山でも記録あり。
この個体も、ゴツゴツとした体表と長い顔つきが、南紀の豊かな海を象徴しているようで逞しく見えます。
縁起物としての一面も
その姿が「竜」に似ていることから「タツノオトシゴ(竜の落とし子)」と呼ばれますが、
別名では「海馬(ウミウマ)」とも呼ばれます。
古くから**「安産のお守り」**として干物を持ち歩いたり、夫婦円満や健康長寿の縁起物として珍重されたりしてきました。
海で見かけたらラッキー、もし網に入っていたら何か良いことがあるかもしれませんね。
まとめ
普段はグレやアオリイカを追いかけている私たちですが、たまにはこうした「海の珍客」に
思いを馳せるのも楽しいものです。
南紀の海は、黒潮の恩恵を受けた多種多様な生物の宝庫。

