せっかく掛けた尺アジ(30cm)を抜き上げようとして足元でバラした経験はありませんか?
その原因はアジ特有の「口の弱さ」と「自重」にあります。
悔しい思いをしないために、大型アジ狙いにおけるタモ網(ランディングネット)の重要性と、
確実に取り込むコツを解説します。
はじめに:その「ポロリ」、運が悪かっただけではありません
竿が大きくしなり、ドラグが鳴る。
慎重に寄せてきて、海面に銀色の大きな魚体がキラリと光る。 「デカい!尺はいったか!?」
興奮が最高潮に達し、そのまま堤防の上に抜き上げようとした瞬間——。
「ブチッ」
空中でアジが針から外れ、スローモーションのように海へとお帰りになる…。
呆然とする釣り人。残ったのは虚無感と、切れた口の破片だけ。
アジ釣り師なら誰しも一度は経験するこの「悲劇」。
実はこれ、運が悪かったのではなく、**「30cmのアジをナメていた」**ことが原因かもしれません。
今回は、なぜ尺アジ狙いに「タモ網」が必須なのか、その物理的な理由を解説します。
1. アジの口は「薄い膜」であると知る
アジの英名「Horse Mackerel」の語源には諸説ありますが、釣り人の間では**「アジの口は紙のように弱い」**というのが常識です。
アジの上顎の横や、口の横にある薄い膜(口膜)は非常に柔らかく、針がここに掛かっている場合、
強い力が加わると簡単に裂けてしまいます。
これを釣り用語で**「口切れ(くちぎれ)」**と呼びます。
小型のアジなら問題ありませんが、サイズが上がると話は別です。
2. 「30cm」の自重は想像以上に重い
ここが最大のポイントです。 魚は長さが2倍になると、重さは約8倍になると言われています。
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15cmのアジ: 重さは約30g〜50g程度(余裕で抜き上げ可能)
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30cm(尺)のアジ: 重さは250g〜300g以上にもなります
300gといえば、350mlの缶ビール1本分に近い重さです。
「薄い膜」一箇所に、空中で「缶ビール1個分」の重さが一点集中する。
さらに、魚は空中で暴れます。その衝撃荷重が加われば、口が裂けるのは物理的に当然の現象なのです。
「引き抜き」がいかにリスキーな行為か、お分かりいただけると思います。
3. 南紀の堤防は「高さ」があるからこそ危険
私たちがホームとする南紀エリアの堤防や磯は、海面までの高さがある場所が多いです。
海面から足場まで3m、5mと高さがあればあるほど、抜き上げの滞空時間が長くなり、
バラす確率は跳ね上がります。
「たかがアジにタモなんて大げさな…」
そう思ってタモを持たずに釣り場へ行き、人生最大の特大アジを目の前で逃がして地団駄を踏んだ
釣り人を、私たちは何人も見てきました。
4. 対策:タモ網(ランディングネット)を持参しよう
結論はひとつ。 **「尺アジを狙うなら、必ずタモ網を持参する」**ことです。
どんなタモが良い?
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柄の長さ: 足場の高さに合わせて4m〜5m以上のもの。
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枠の大きさ: アジなら40cm枠でも十分ですが、不意のヒラメや青物に備えて少し大きめがあると安心です。
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アジングの方: 機動力を損なわない、腰に装着できるタイプのコンパクトなランディングネットがおすすめです。
取り込みのコツ
魚を海面まで浮かせたら、空気を吸わせて大人しくさせます。
タモは魚を追いかけるのではなく、**「タモを海中で待機させ、竿操作で魚をタモに誘導する」**のが正解です。
まとめ:悔しさを「喜び」に変えるために
尺アジは、回遊のタイミング、場所、そして釣り人の腕が噛み合って初めて出会えるターゲットです。
その千載一遇のチャンスを、最後の最後で「道具の準備不足」で逃すのはあまりにも勿体ないことです。
「タモさえあれば獲れていたのに!」
そんな後悔をしないために。
次回の釣行では、クーラーボックスや竿と一緒に、必ず「タモ網」を肩に掛けて出撃してください。
その網に入るのは、きっと自己記録更新の素晴らしい一匹になるはずです。

