目次
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はじめに:アジは「大衆魚」ではない、この冬だけの「高級魚」だ
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脂質含有量の真実:一般的なアジ vs 寒尺アジ
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視覚で確認する「内臓脂肪」と「サシ」
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南紀の海が育む「脂の質」の違い
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実食レポート:口内温度で溶ける脂の旨味
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まとめ:この脂は、スーパーでは買えない
はじめに:アジは「大衆魚」ではない、この冬だけの「高級魚」だ
「アジなんて、さっぱりした青魚でしょう?」
もしそう思っているなら、あなたはまだ南紀の冬を知りません。
冬の堤防から釣れる30cmオーバーの「寒尺(かんしゃく)アジ」。
この魚の身に含まれる脂は、マグロのトロや高級和牛に例えられるほどです。
なぜ、これほどまでに脂が乗るのか?
今回はその理由を徹底的に分析します。
脂質含有量の真実:一般的なアジ vs 寒尺アジ
魚の美味しさを決める大きな要素、それが「脂質含有量」です。
一般的な季節外れのアジや、痩せた個体の脂質は、わずか**3%〜4%程度と言われています。
これはいわゆる「さっぱりとした味」です。
一方、ブランドアジとして有名な「関アジ」や島根の「どんちっちアジ」などは、旬の時期には脂質が10%〜15%**を超えます。
そして、南紀の好条件で育った「寒尺アジ」もまた、この最高ランクの数値を叩き出すポテンシャルを持っています。
脂質10%超えというのは、もはや青魚の領域を超え、中トロレベルの濃厚さを意味します。
これが「トロに匹敵する」と言われる数値的な根拠です。
視覚で確認する「内臓脂肪」と「サシ」
釣った寒尺アジを捌くとき、その証拠は一目瞭然です。
包丁を入れるとお腹の中から、真っ白な固形物が溢れ出します。
これは「ラード」のような内臓脂肪の塊です。
内臓周りにこれだけの脂肪を蓄えているということは、筋肉(身)の方にも十分に脂が回っている証拠。
三枚におろした身を見ると、皮下脂肪が白く層をなし、赤身の部分にも細かい「サシ(霜降り)」が入っています。
このビジュアルこそが、最強の寒尺アジである証明です。
南紀の海が育む「脂の質」の違い
なぜ南紀のアジだけがこれほど太るのか。
それには「運動量」と「食事」のバランスが関係しています。
黒潮の恩恵を受ける南紀エリアは、冬でもアミエビやキビナゴなどの餌(ベイト)が豊富です。
さらに、入り組んだ岩礁帯や堤防周りに「居着く」ことで、無駄な回遊を減らし、食べた
エネルギーをすべて「脂」として体に蓄積させることができます。
アスリートのように引き締まった回遊型とは違い、南紀の居着き寒尺アジは、食っちゃ寝生活を
許された「わがままボディ」の持ち主なのです。
実食レポート:口内温度で溶ける脂の旨味
実際に刺身で食べると、その特異性は顕著です。
醤油につけた瞬間、醤油の表面にパッと脂の膜が広がります。
口に入れると、人間の体温(口内温度)で脂がスッと溶け出し、濃厚な甘みが舌を包み込みます。
通常の青魚にあるような「血生臭さ」は皆無。
あるのは、熟成されたような深い旨味と、とろける食感だけです。
炙りにすれば、皮目の脂が焦げて香ばしさが加わり、まさに絶品。
ご飯に乗せれば、アジの脂だけで何杯でもいけるほどの破壊力があります。
まとめ:この脂は、スーパーでは買えない
このレベルの脂質を持ったアジは、鮮度維持が極めて難しいため、通常の流通ルートには滅多に乗りません。
脂が多すぎるがゆえに、酸化も早いからです。
つまり、この「トロアジ」を最高の状態で味わえるのは、現地で釣り上げ、その場で血抜きなどの
処理ができる釣り人だけ。
南紀の寒尺アジ釣りは、単なる魚釣りではなく、「究極の食材調達」なのです。

