スーパーのアジとは別次元。 市場流通1%未満と言われる南紀の「居つき寒尺アジ」。
なぜ堤防から釣れるこの魚が、高級料亭レベルの味なのか?
その秘密は「黄金色の魚体」と「南紀の地形」にありました。
冬の堤防釣りの最高峰、その魅力を徹底解説します。
はじめに:釣り人の特権、幻の「1%」
冬の南紀、冷たい北風の中で竿を出す理由。
それは、釣り人だけが味わえる「至高の味」があるからです。
市場に流通するアジの99%以上は、沖合を回遊する黒っぽいアジと言われています。
しかし、南紀の堤防周りには、流通市場の1%にも満たない特別なアジが生息しています。
それが「居つきの寒尺アジ」です。
今回は、なぜこの魚が「激旨」と称されるのか、その理由を深掘りします。
1. 「黒アジ」と「黄アジ」の決定的な違い
アジには大きく分けて2つのタイプがあることをご存知でしょうか。
一つは、広大な海を群れで泳ぎ回る「回遊型(セグロ・黒アジ)」。
運動量が多いため身が引き締まっていますが、脂の乗りは個体差があります。
もう一つが、餌が豊富な浅瀬や岩礁帯に定着する「居つき型(黄アジ・金アジ)」です。
南紀の堤防で狙う寒尺アジは、後者の「居つき型」が多くを占めます。
あまり動き回らず、豊富な餌を食べて育つため、体高があり、全体的に黄色味を帯びているのが特徴です。
この「育ち方の違い」が、味の決定的な差となります。
2. なぜ「南紀」の堤防なのか?
「居つきのアジ」自体は全国にいますが、なぜ南紀のものが特別なのか。
理由は**「黒潮」と「急深な地形」**にあります。
南紀の海は、少し投げればドン深になる地形が多く、岸近くまで栄養豊富な黒潮の分流が差し込みます。
プランクトンや小魚(ベイト)など、アジにとっての極上の餌が、堤防のすぐそばに溜まる環境なのです。
わざわざ沖まで泳がなくても、堤防周りで最高の食事ができる。
そんな「飽食環境」で育ったアジが、不味いわけがありません。
さらに冬場(寒アジ)は、産卵に向けてではなく、寒さを乗り越えるために内臓脂肪を蓄えます。
これが、口の中でとろけるような脂の甘みを生み出します。
3. 30cmオーバー「尺アジ」の壁
通常、居つきのアジはあまり大きくならないと言われます。
しかし、南紀の豊かな環境は、居つきのまま30cmを超える「尺アジ」へと成長させます。
30cmを超えたアジの身の厚みは、20cmクラスとは比較になりません。
包丁を入れた瞬間、刃にネットリと脂が絡みつく感覚。 刺身にすれば、醤油を弾くほどの脂乗り。
焼けば、自身の脂で皮がパリッと揚がったようになるほどのジューシーさ。
これはスーパーの鮮魚コーナーでは絶対に出会えない、釣り上げた直後の魚だからこそ味わえる感動です。
まとめ:寒さを我慢してでも釣る価値がある
流通市場にはほとんど出回らない、南紀の堤防寒尺アジ。
その正体は、豊かな海で餌を飽食し、あまり動かずに太り続けた「海のエリート」でした。
寒い冬の夜、電気ウキが海中に消し込む瞬間。
その先には、高級料亭でもなかなかお目にかかれない「激旨魚」が待っています。
ぜひ、この冬は南紀の堤防で、幻の1匹を狙ってみてください。

