「ブリ10本よりカンパチ1本」——。
ショアジギングやオフショアのルアーフィッシング、または泳がせ釣り(のませ釣り)に熱中して
いるアングラーなら、一度は聞いたことがある言葉ではないでしょうか。
もちろん、ブリは出世魚の代表格であり、冬の「寒ブリ」は格別の美味しさ。
群れに当たれば数釣りが楽しめ、「ブリのナブラ(鳥山)」は釣り人の誰もが興奮する光景です。
しかし、それでもなお「カンパチ1本」に特別な価値が置かれるのには、明確な理由が存在します。
それは、カンパチという魚が持つ、アングラーを惹きつけてやまない「特別なステータス」の証なのです。
なぜカンパチは、ブリ10本と引き換えにされるほど、釣り人のロマンをかき立てるのでしょうか。その3つの核心に迫ります。
理由①:圧倒的なファイト!「引き」の質が違う
カンパチが「別格」とされる最大の理由は、その**圧倒的なファイト(引きの強さ)**にあります。
ブリも非常にパワフルな魚ですが、その引きは「ドン、ドン」と重く、比較的素直に横(船の場合は下)に走る傾向があります。
一方、カンパチの引きは「シャープで、暴力的」と表現されます。
- 強烈な初速と突進力: ヒットした瞬間、アングラーが体勢を整える間もなく、とてつもないスピードで突っ込みます。
- 根に潜る習性: カンパチは、ブリと違って根(海底の岩や障害物)に向かって一直線に潜る習性があります。これは、釣り人にとって「ラインブレイク(糸切れ)」に直結する最も恐ろしい行動です。
- スタミナと粘り: 瀬際での攻防は熾烈を極めます。大型になればなるほど、そのパワーとスタミナは底知れず、中途半端なタックルでは太刀打ちできません。
この「根に潜られたら終わり」という緊張感の中、強引かつ繊細なロッド操作とドラグワークを駆使して、カンパチを根から引き剥がす。
このスリリングな攻防こそが、カンパチが「格闘」と称される所以(ゆえん)です。
同じ10kgのブリとカンパチなら、カンパチの方が何倍も手強いと言われるのはこのためです。
理由②:出会えるチャンスの差。「希少性」の高さ
第2の理由は、その**「希少性」**です。
ブリ(ハマチ、ワラサ)は、日本近海を広範囲に回遊する魚であり、時期や場所が合えば、群れに遭遇し「数釣り」が楽しめることも珍しくありません。
特に、養殖(ハマチ養殖)が盛んであることからも、私たちにとって比較的「身近な青物」と言えます。
しかし、カンパチは(特に大型は)ブリに比べて圧倒的に個体数が少なく、狙って釣るのが難しい魚です。
- 生息域の違い: ブリが比較的浅い沿岸部にも回遊するのに対し、カンパチはより水深があり、潮通しの良い沖合の「瀬(岩礁地帯)」や「根」を好みます。
- 単独行動: ブリが大きな群れで行動することが多いのに対し、大型のカンパチは単独、または少数の群れで行動することが多いとされます。
- 警戒心の強さ: カンパチは非常に目が良く、警戒心が強いとされています。ルアーや仕掛けを見切る(偽物だと見破る)能力も高いのです。
ショア(陸っぱり)から大型のカンパチを釣ることは、まさに「奇跡」に近いと言われるほど難易度が高く、オフショア(船)であっても、専門に狙わなければなかなか出会えません。
この「簡単には釣れない」希少性が、釣り人の「いつかは釣りたい」という憧れを強く刺激するのです。
理由③:食味と市場価値。「高級魚」としてのステータス
第3の理由は、**「食味」と「市場価値」**です。
ブリはもちろん美味しい魚ですが、その評価は「旬(冬)」に大きく左右されます。
夏のブリは脂が少なく、評価が下がることもあります。
一方、カンパチは「一年を通して味が安定している」という大きな特徴があります。
- 上質な脂と身質: カンパチの身は、ブリに比べて身が締まっており、脂も「ギトギト」ではなく「上品でさっぱり」しています。この上質な脂の旨味が、刺し身や寿司ネタとして最高級の評価を受ける理由です。
- 鮮度の持ち: ブリに比べて身がしっかりしているため、鮮度が落ちにくく、熟成させても美味しいと言われます。
- 市場価格: 養殖技術が確立しているブリと比べ、天然の大型カンパチは市場に出回る量が少なく、常に高値で取引される「高級魚」です。
釣り上げた後の「食べる楽しみ」においても、カンパチは特別な存在。
その希少価値と食味の良さが、市場価格にも反映されているのです。
ブリももちろん素晴らしい魚!
ここまでカンパチの価値を強調してきましたが、誤解しないでいただきたいのは、ブリも最高にエキサイティングなターゲットであるということです。
目の前で起こるブリのナブラ、ルアーに猛然とアタックしてくる姿、そしてドラグを唸らせる重量感のあるファイト。
冬の脂が乗った寒ブリの刺し身やブリしゃぶは、まさに絶品です。
「ブリ10本よりカンパチ1本」という言葉は、ブリの価値を下げるものではなく、
それほどまでにカンパチを釣るという「体験」と「価値」が、釣り人にとって特別である、
という最上級の表現なのです。
まとめ
「ブリ10本よりカンパチ1本」と言われる理由をまとめると、以下の3点に集約されます。
- ファイト: 根に猛進する、シャープで暴力的な引き。
- 希少性: ブリに比べて個体数が少なく、出会うこと自体が難しい。
- 食味・価値: 一年を通して味が良く、市場価値も高い高級魚である。
「パワー」「希少価値」「美味」という、釣り人が魚に求める全ての要素を、極めて高いレベルで兼ね備えているのがカンパチです。
だからこそ、アングラーは「夢の1本」を求め、危険な磯に立ち、沖合の荒波に挑み続けます。
あなたも、その強烈なファイトと出会いの感動を求めて、カンパチを狙ってみませんか。


